映画日記 2003,1,1〜12,31
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「ジーパーズ・クリーパーズ」 アメリカ映画
12月27日 ビデオ(WOWOWにて収録)

大学生の姉弟が車で帰省途中、不気味なトラックに後から煽られる。
命からがら逃れることができたが、その後再びトラックを発見。
運転手は教会の庭の大きな鉄管になにやら人のような物をほりこんでいる。
トラックが立ち去った後、気になった弟は管をのぞき込み、誤って穴の中に転落する。
そこには無数の死体が壁に貼り付けられていた。
警察に通報するが、それから得体の知れない怪人が姉弟を執拗に襲いだした。
フランシス・フォード・コッポラ製作ということで見たが、唖然とした。
おどろおどろしい人物イラストのポスターと「暗黒の都市伝説」のサブタイトルから、
町の住民全体がカルト集団でと想像していたがまったく違った。
怪人がなんなのか全くわからない。
殺人鬼は今まで多数登場したがジェイソンでもフレディーでもない怪物を、違うノリで
映画化しようと思ったのかも知れないけど、全体的になんか違和感がある。
怪物の全体像がハッキリしないからやと思う。
初めは隠していても次第に姿がわかりだして、観客にそのキャラクターが認識されないと
怖くない。
予言者もなんか中途半端な存在。


「マトリックス レボリューションズ」 アメリカ映画
12月21日16:30 梅田ブルク7

ネオは現実とマシン世界の間に取り残され、昏睡状態が続いていた。
マシン軍はザイオンに迫り、人間達は最後の戦いに挑むが、強力でおびただしい数の敵を前に
防御線は崩れようとしていた。
一方スミスはマシンから完全に独立し、マシンをも凌駕するほどの強大なパワーを持ち、
ネオに立ちはだかる。
人気シリーズ完結編。
「2」「3」を同時に作って完結させようという意図はわかるが、もともとわかりにくい話を
途中でひねくるから、もう収拾がつかなくなってる感じ。
映像はもう驚くような目新しさもなく、「エイリアン2」に出てきたメカのパクリもある。
「2」まででやめといたらよかったのに。
ネオが弱くて話がわかりにくくてゴチャゴチャしてるという印象しか残らなかった。


「コンフィデンス」 アメリカ映画
12月19日15:30 ヘラルド試写室(ギャガ・ヒューマックス)

若き天才詐欺師のジェイクは仲間達とまんまと大金を手に入れたが、
その金は裏社会の大物「キング」の金だった。
しばらくして仲間の一人が死体で発見され、ジェイクはキングに手打ちとして大金の詐欺を持ちかける。
話に乗ったキングは彼らの見張り役として手下のルーパスを付ける。
ジェイクは女スリのリリーを仲間に入れ、銀行経営者でありながら裏社会に通じているプライスから
500万ドルもの大金をせしめる計画を立てるが、FBI捜査官のピュターンがジェイクに迫っていた。
「プライベート・ライアン」「15ミニッツ」のエドワード・バーンズ主演。
この種の詐欺映画はどうしても「スティング」と比較されるし、話の発端も「スティング」みたい。
大仕掛けな詐欺という割に結局はコンピューターでの金の移動となるので、仕掛けに緊迫感が生まれない。
小ネタの宝石店での詐欺だけが感心できる手口。
キング役のダスティン・ホフマンも猜疑心の強いボスのキャラクターを自分なりに作ったが、
この話では生かされなかったよう。
FBI役のアンディー・ガルシアは初め誰だかわからないぐらい太って、昔の面影がない。


「レジェンド・オブ・メキシコ デスペラード」 アメリカ映画
12月18日13:30 完成披露試写、リサイタルホール(ソニー)

CIA捜査官サンズはメキシコ大統領暗殺を狙うマルケス将軍抹殺のため伝説の殺し屋
エル・マリアッチを雇う。
マリアッチが仕事を受けたのは報酬のためではなく、妻子を殺したマルケスへの復讐のためだった。
しかしサンズの真の目的は、麻薬王バリーリョから流れるマルケスの闇の金を奪うことだった。
それぞれのドロドロとした思惑の中に、マリアッチはかつての仲間達と乗り込んでいくのだった。
ロバート・ロドリゲス監督、アントニオ・バンデラスのコンビに、ジョニー・デップが加わった
「デスペラード」第2弾。
ウィレム・デフォー、太って妙な凄みを増したミッキー・ロークなど怪優も脇を固めているが、
人間関係が煩雑でわかりにくい。
ストーリー展開ももたついてるし、カッコはつけているもののアクションのキレも悪い。
ジョニー・デップが脇役のはずが、またまた妙なキャラクターを作り上げ全部さらってる。
これだけのくせのあるキャラクターをせっかく揃えたのに、ちゃんと生かし切れてない。
ロドリゲスはお子様映画ばかり撮ってて、ボケたか?


「ラブストーリー」 韓国映画
12月10日13:30 東宝試写室(クロックワークス、メディア・スーツ)

女子大生のジヘは友人スギョンの憧れの演劇部の先輩サンミンへのラブ・Eメールの代筆をしているが、
実はジヘもサンミンが好きで言い出せないでいる。
ジヘの母が旅行中、掃除をしていると母の若い頃の手紙や日記が見つかる。
風に飛ばされた手紙を手に取り、つい読んでしまうジヘ。
そこには母の切ない恋が綴られていた。
「猟奇的な彼女」のクァク・ジェヨン監督作品。
ソン・イェジンが女子大生ジヘと若かりし頃の母の2役を演じている。
現代が女性2人の三角関係、昔が男性2人の三角関係で、共に友人の代筆をしている。
ソン・イェジンは清楚で日本人好み。この切ない恋物語のヒロインとしてピッタリの役。
現代と昔の恋物語を平行して描いているが、自然な切り替わりで煩雑にならずうまくつないでいる。
ただ少し物語ができすぎの感がある。切ない恋のお伽話として観るべきか。


「ラブ・アクチュアリー」 アメリカ映画
12月9日15:00 UIP試写室(UIP)

太めの秘書に一目惚れしてしまう英国首相、妻を亡くし義理の息子の初恋の行方を案じる男、
弟に恋人を寝取られた作家と言葉の通じない外国人女性とのぎこちない恋、亭主の浮気を知った妻、
長年の片思いのキャリアウーマン、落ち目のロック歌手とマネージャーの絆など、9つのエピソードで
「愛」を語る異色作。
ヒュー・グラント、リーアム・ニーソン、エマ・トンプソン、ビリー・ボブ・ソーントン、ローラ・リニー、
ローワン・アトキンソンら19人によって話は綴られる。
「ノッティングヒルの恋人」「ブリジット・ジョーンズの日記」の脚本家リチャード・カーティス初監督作品。
同時進行でいろんな話が進行するので、登場人物の半分が一目惚れで始まる。
たくさんのシチュエーションを並べすぎで時間的にはしょらないといけなくなった。
2組ほどいらないシチュエーションがあったので、それをカットすればもう少し掘り下げられたのに。
登場人物が多いのでそれぞれの登場時間は短くなるが、その中でエマ・トンプソンの「泣き」は印象を残した。
短い時間の中で「自分の一番の見せ場はここ」と、すばらしい泣きを見せる。
多分10種ぐらいの「泣き」の手の中から選んだ「泣き」だと思う。
エマ・トンプソンの芝居の引き出しの多さを垣間見た気がする。


「ブラウン・バニー」 アメリカ・日本映画
12月4日13:30 東宝東和試写室(キネティック)

バイクレーサーのバドは自ら運転する黒いバンにバイクを乗せ全米各地を転戦している。
ニューハンプシャーのレースを終え、5日後に行われるカリフォルニアのレースに向けて
アメリカ大陸を横断する旅に出た。
旅の途中何人かの女性と知り合うが、バドは別れた彼女デイジーが忘れられず、荒涼たる
アメリカの大地を車で走らせながら涙する。
やっとたどり着いたカリフォルニアのホテルでバドはデイジーと再会するが・・・。
「バッファロー’66」のヴィンセント・ギャロが製作・監督・脚本・撮影・美術・編集・主演と、
つまり一人で全部作った作品。
心の痛手を負った男のロード・ムービーだけど、映像が妙に間延びしてる。
車窓の景色が何の変哲もない。
まぁ日常の景色というのはそんなもんやけど退屈。
セリフも全部で30言ぐらいしかない。
カンヌですごいバッシングを受けたらしいけど、そらこんなん見せられたらみんな怒る。
ひとりよがりの映画。
これだけ信用を落としたら、これからのギャロは辛いと思う。


「シービスケット」 アメリカ映画
11月28日13:00 UIP試写室(UIP)

1930年代、大恐慌時代のアメリカ。
ハワードは自動車ディーラーとして富を得たが、最愛の息子を亡くし
妻とも離婚、失意の日々を過ごしていたが、ある日知的で美しい女性
マーセラと知り合い二人は結婚する。
乗馬好きのマーセラの影響で競馬に興味を示すハワード。
ハワードによって見いだされたのは時代に取り残された老カウボーイのスミス、
恐慌で一家離散し草競馬とボクシングでわずかな日銭を稼ぐレッド、
そして優れた血統を持ちながら人を拒絶する暴れ馬「シービスケット」だった。
彼らはシービスケットの底知れぬ才能に人生の再起を賭ける。
物語はトビー・マグワイア、ジェフ・ブリッジズ、クリス・クーパーを中心に展開するが、
この3人が出過ぎずいいバランスで話が進む。
ジェフ・ブリッジズは渋く、クリス・クーパーも寡黙だがしっかり脇を支える。
脇役人も良く、レッドのライバル役のゲイリー・スティーヴンス、ラジオの実況役ウィリアム・H・メイシー
など、物語の香辛料としてちゃんと働いている。
実話らしいが、物語はいかにもと言った感じで、感動巨編に仕立てられている。


「しあわせな孤独」 デンマーク映画
11月26日15:30 ヘラルド試写室(ギャガ・コミュニケーションズ、Gシネマグループ)

プロポーズされ幸せの絶頂のセシリの目の前で、恋人ヨアヒムは車に轢かれる。
轢いたのは医者の妻マリー。娘のスティーネと口論していて前方不注意での過失だった。
ヨアヒムはマリーの夫ニルスの勤める病院に担ぎ込まれ、一命をとりとめたが全身麻痺で
一生寝たきりになってしまった。
絶望感で荒れるヨアヒムは、献身的に看病するセシリに辛く当たる。
妻の起こした事故の罪悪感からニルスはセシリを慰め、力になろうとする。
セシリにとってもニルスの慰めは心の支えとなったが、やがて二人は惹かれ合い、
運命の歯車は狂いだす。
デンマークで8人に1人が観たと言われるぐらい大ヒットした作品で、
「ダンサー・イン・ザ・ダーク」と同じく「ドグマ」(すべてロケーション、手持ちカメラ、
自然な照明)で撮影されている。
手持ちカメラだけど「ダンサー〜」のように観ていて気持ち悪くなるようなブレはなく、
しっかり構えて撮られている。
交通事故の時車のドアノブを握りしめた手、家を出て行った夫に嘆く妻の子供の抱き方など、
女性監督スザンネ・ビエールは隅々まで実に細かな演出をしていて、それがリアル感を増す。
登場人物全員が重要な役どころで、1人1人ちゃんと心のひだを描き出しみごと。
特に前半たいして存在感のなかった妻が、後半がぜん見せる。
ラストシーンで車窓からサーモグラフィーで撮られた映像がまたいい。
冬の街で、人の顔や手だけがオレンジ色に光り、人の温かさが感じられるすばらしい映像だった。
今年のベスト5に入るいい映画。


「タイムライン」 アメリカ映画
11月25日19:20 完成披露試写、ナビオTOHOプレックス(ギャガ・ヒューマックス)

フランスのドルドーニュで発掘調査をしている一団が完全に手つかずだった14世紀の修道院跡で
不思議な物を見つける。
それはスポンサー企業ITCを訪ねたまま行方不明になった、発掘チームリーダーのジョンストン教授
の「HELP」の走り書きと、その時代にはない眼鏡レンズだった。
一行はITCを訪れ、驚愕の事実を知らされる。ITCは時空間転送装置を開発し、
14世紀にジョンストン教授を送ったが行方不明だという。
発掘現場の眼鏡はまさにジョンストン教授の物で、「HELP」の走り書きは現代の彼らに当てた
14世紀からの「SOS」だったのだ。
一行は教授救出のため時空間転送装置で14世紀に向かうが、そこは英仏百年戦争のまっただ中だった。
「オーメン」「スーパーマン」「リーサル・ウエポン」のリチャード・ドナー監督作品。
歴史的事件の現場にタイムスリップする、昔のテレビシリーズ「タイムトンネル」を
そのまま映画にしたようなお話。
登場人物に知った顔があまりいないので物足りない。
最初の方に張られた伏線はバレバレ。救出に行った一行も別行動をとったりするので
話が散漫になってしまった。脚本が悪い。
ベンチャー企業の社長がビル・ゲイツみたいで、いかにもと言った趣。


「デッドロック」 アメリカ映画
11月17日13:00 東映試写室(アートポート)

カリフォルニア州スウィートウォーター刑務所では、更正の特別プログラムとして
囚人同士を戦わせるボクシング試合を行ってきた。
囚人達を熱狂させるのは67戦無敗のモンロー。彼は元ヘビー級ボクサーで
妻の不倫相手を殴り殺し服役しているが、普段は物静かな男で看守からも一目置かれている。
そこにレイプ犯として元ヘビー級チャンピオンのアイスマンが服役して来る。
服役囚のマフィアのボス、リップステインは塀の外からも賭け金を集めて、
傍若無人の振る舞いのアイスマンとモンローを戦わせ儲けようと画策する。
「追跡者」「ブレイド」のウェズリー・スナイプス、「パルプ・フィクション」
「ミッション・インポッシブル」のヴィング・レイムス主演、ウォルター・ヒル監督作品。
物語にひねりがない。ただ囚人がボクシングするだけの物語に終わり、
人物の掘り下げも浅い。
スナイプスなどはボクシングしてるか、マッチで橋や城を作って工作してるだけの男のよう。
マフィアのボス役のピーター・フォークだけが印象を残し得している。
ウォルター・ヒルはファンをこの10年ずっと失望させてる。
もうあかんな。


「ファインディング・ニモ」 アメリカ映画
11月16日17:00 完成披露試写、リサイタルホール(ブエナ・ビスタ)

オーストラリア、グレートバリアリーフに住むカクレクマノミのマーリンは
一人息子のニモと暮らしていた。
マーリンの妻は卵を守って命を落とし、たった一匹残ったニモをマーリンは男手一つで
育てているが心配性がたまにきず。
小学校に上がったニモは仲間と肝試しで外海に出た途端、人間のダイバーに捕らわれてしまった。
それからマーリンの息子捜しの旅が始まった。
「トイ・ストーリー」「モンスターズ・インク」のピクサーが制作したフルCGアニメ。
とにかく魚の動きを良く研究している。
漫画的な魚の動きではなく、実際の魚らしい細かな動きを心がけているところに
ディテールのこだわりが伺える。
ニモが捕らわれている水槽のシーンなどは、熱帯魚を飼ってる人ならうなずけるシーンも多い。
メインキャラと違うエビやカモメがおかしい。
今回も膨大な苦労をおくびにも出さず、エンターテイメントに徹しているピクサーの
職人芸で楽しませてもらった。


「コール」 アメリカ映画
11月13日15:30 ヘラルド試写室(ギャガ・ヒューマックス)

カレンは麻酔医のウィル、6歳の娘アビーと幸せな生活を営んでいたが、
ある日アビーが誘拐された。
カレンの目の前に現れた誘拐の首謀者はジョーと名乗る男で、夫のウィルも
仲間に監禁されているという。
つまり家族3人が3人の犯人にそれぞれ監禁されていて、仲間同士は30分ごとに
連絡を取り合い、この連絡がないと娘を殺すという
ジョーは今まで4回もこの方法でまんまと身代金をせしめてきた。
家族3人が外部とまったく接触できない状況で、またしても犯人達の完全犯罪成立かと思われたが、
アビーが重い喘息持ちで、薬がないと生命が危険にさらされる事がわかり、
犯人達の計画に微妙なズレが生まれていく。
「メッセージ・イン・ア・ボトル」「エンジェル・アイズ」のルイス・マンドーキ監督作品。
誘拐首謀者役のケビン・ベーコンは蛇のようなねちっこさで適役やけどハマり過ぎで
面白味に欠ける。
子供が喘息とわかると「またか」と思ってしまった。
あまりにもこの手のパターンが多すぎる。
この誘拐方法、もっと短時間でやれば効果的なのに、時間を掛け過ぎ。
夫が麻酔医という設定も、初めから後の展開のための仕込みやなとチョンバレ。
アビー役は「アイ・アム・サム」のダコタ・ファニング。


「アンダーワールド」 アメリカ映画
11月12日15:30 ヘラルド試写室(ギャガ・ヒューマックス)

人間の知らない所で長年にわたって吸血鬼族と狼男族は戦ってきた。
絶対的優位に立っている吸血鬼族の女戦士セリーンは狼男を見つけては抹殺するハンターだが、
狼男族がマイケルという人間の医師をつけ狙っていることに気付く。
狼男族の長ルシアンはマイケルを使って起死回生の反撃に打って出ようと画策していた。
狼男族の不穏な動きを感じたセリーンはリーダーのクレイヴンに進言するが
聞き入れてもらえず、かつてのカリスマ的リーダー、ビクターを
500年の眠りから蘇らせるのだった。
「ブロークダウン・パレス」「パール・ハーバー」のケイト・ベッキンセール主演、
レン・ワイズマン初監督作品。
狼男や吸血鬼が人間を襲うのでなく、それぞれが戦っていて、人間としては
彼らの戦いに関係がないので観ていても「勝手にしはったら」と言った感じ。
のめり込み度は薄い。
セリーンの黒革全身スーツやコートなど、マトリックス的にコスチュームを決めたつもりだが
も一つかっこよさに欠ける。
ピストルもあんなに撃っているのに全然当たらんのかと思うぐらいヘボい。
ワイズマン監督、ミュージック・クリップ界では有名かもしれんけども、
映画は別物やねんからもっと頑張って欲しい。


「MUSA 武士」 韓国映画
11月11日13:00 ヘラルド試写室(ギャガ・ヒューマックス)

明と友好関係を結ぶため高麗の使節団が長旅の末、南京城へたどり着くが
スパイ容疑で囚われ、砂漠地帯へ流刑される。
護送途中、元軍に助けられ故郷を目指すが、途中元に囚われた明のプヨン姫を見つける。
彼らの使命は明との友好関係を築くこと。明の姫を救うことで明に取り入ろうと姫を救出するが、
それにより元からも追われる身になってしまった。
執拗に襲ってくる元をかわしながら、難民達も引き連れた逃避行の末、海岸の土城に立てこもり、
最後の決戦が始まろうとしていた。
韓国のアクション時代劇。
ハリウッドの大エキストラを動員した合戦シーンには勝てないので、
少数ながらもカメラワークで工夫した。
金はかかってないが頑張っている。
主人公達があまりにも強すぎるきらいはあるが、1人また1人と倒れ涙を誘う。
韓国俳優陣に混じって「初恋の来た道」「HERO」のチャン・ツィイーが華を添えている。


「スズメバチ」 フランス映画
11月8日22:10 WOWOW

アルバニア・マフィア最高幹部のアベディンの護送の任についた女性中尉ラボリ。
アベディン奪回のため武装したマフィアの一団に襲われ、やむなく倉庫に逃げ込む。
ところが倉庫には窃盗集団がいて、窃盗団共々マフィアに包囲されてしまう。
窃盗団も手を組んでマフィアと戦うが、多勢に無勢。
豊富な銃器で攻めてくるマフィアに追いつめられていく。
フローレン・エミリオ・シリ監督作品。
最初の護送シーンはキビキビした動きで少数だけど精鋭部隊である印象を
ちゃんと観客に植え付けた。
銃撃がド派手で撃ちまくり。
物語は単純なのだけどアクション映画としてダレさせず最後まで見せた。
登場人物も煩雑にならず、それぞれのキャラもちゃんと過不足なく描いているのは
演出のうまさ。


「ハリウッド的殺人事件」 アメリカ映画
11月5日13:00 完成披露試写、リサイタルホール(ブエナビスタ)

ロサンジェルス市警殺人課のベテラン刑事ギャヴィランは、新米刑事K.C.とコンビを組んでいるが、
二人はそれぞれサイドビジネスをしている。
ギャヴィランは不動産屋、K.C.はヨガのインストラクター。
クラブでラップグループが殺され捜査に当たるが、捜査中も物件問い合わせの電話が
ひっきりなしにかかる。
K.C.はというと密かに俳優への転身を狙っていて、捜査の合間に芝居の稽古に余念がない。
やがてレコード会社社長が捜査線上に浮かび、警察内部にも事件の関係者がいるのではとにらむ。
ハリソン・フォードとジョシュ・ハートネットがコンビを組んだ刑事コメディー。
コメディーと言うには中途半端で、アクションもそれほどのことはないし、
なによりハリソン・フォードとジョシュ・ハートネットはコメディーに似合わない。
今更こんなコンビで刑事物撮らなくても、と言った感じ。
コメディーとシリアスなアクションがどっちつかずのままで、ハリソン、ジョシュもしっくりこない。
意図がよくわからん映画。
監督は「さよならゲーム」「ティン・カップ」のロン・シェルトン。


「レッド・サイレン」 フランス映画
11月4日13:30 東宝東和試写室(コムストック)

12歳の少女アリスが警察を訪れ、アニータ刑事に1枚のDVDを見せる。
そこには母親が行った凄惨な殺人シーンが収録されていたが、
政財界とマフィアにもつながりのあるアリスの母親の捜査を上司は渋る。
母親の手下が警察に迎えに来たがアリスは逃走し、偶然居合わせた
ヒューゴの車に逃げ込む。
ヒューゴは反ファシスト組織「自由の鐘」の元傭兵で、誤って子供を
撃ち殺してしまった過去を持つ。
行きがかりとはいえ、離婚してポルトガルに住む父の元に行きたいという
アリスを守れるのは自分だけと、ヒューゴは車を走らせるが、
武装した追っ手達がヒューゴ達をつけ狙う。
「EXITイグジット」のオリヴィエ・メガトン監督、「グラン・ブルー」
「奇跡の海」のジャン=マルク・バール主演作品。
形を変えた「レオン」で目新しい所はないのだけど、ホテルの銃撃戦はすごい。
元軍人の猛者達と主人公の狭いホテルでの銃撃戦。豊富で強力な火器で撃ちまくる。
暗闇でのサーモグラフィーを使った主人公の照準器も映画では珍しい。
この映画の見所はこのホテルの銃撃戦だけ。後はたいしたことない映画。


「アイデンティティー」 アメリカ映画
10月9日13:30 ソニー試写室(ソニー)

大雨の夜、道路が冠水し見ず知らずの男女が吸い寄せられるように、
とあるモーテルに投宿する。
女優と運転手、囚人と刑事、子供連れの夫婦、娼婦、カップル・・・。
やがて彼らは1人づつ何者かに殺され、死体までもが忽然と消え失せる。
いったい誰が何のために、田舎のモーテルでそれぞれの猜疑心が渦巻く。
ジョン・キューザック主演のサイコ・ミステリー。
モーテルでのサイコ・ミステリーという手垢にまみれたジャンルで、
低予算の作りなのでたいして期待して観ていなかったが、脚本が上手い。
予想しない展開だった。
前半はありきたりの犯人捜しだけど、どんでん返しでアッと言わせる。
平行していた二つの話がこれでつながる。
サイコ・ミステリーも、まだまだアイデア次第で面白い物が撮れる好例。
共演はレイ・リオッタ。「17歳のカルテ」「ニューヨークの恋人」の
ジェームズ・マンゴールド監督作品。


「バッドボーイズ 2バッド」 アメリカ映画
9月18日19:20 完成披露試写、ナビオTOHOプレックス(ソニー)

マイアミ市警麻薬取締チームのマーカスとマイクは、
麻薬シンジケートがどのようにしてマイアミに麻薬を持ち込んでいるのかがわからない。
名コンビとも言える二人だが、マーカスは引退を考え、マイクはマーカスの妹シドと
付き合っていることをマーカスに言い出せない。
麻薬取締局員シドは潜入捜査でシンジケートのボスに接触するが
身元がバレ、キューバに拉致されてしまった。
マーティン・ローレンス、ウィル・スミス主演の「バッドボーイズ」第2弾。
「アルマゲドン」「パール・ハーバー」の製作者ジェリー・ブラッカイマーと
マイケル・ベイ監督の強力タッグ。
初めちょっとバカにして見ていたが、アクションがすごい。
あまたの映画で嫌と言うほど行われてきたカーチェイスが、まだこんなにワクワク
ドキドキするように撮れるなんてすごい。
ガン・アクションもド派手。
最後は警察官のくせにどこまですんねんと思えるぐらいエスカレートするが、
たっぷり楽しめた。
製作費を惜しまないブラッカイマーとアクションの手練れベイ監督の
サービス精神満点のアクション映画。


「リーグ・オブ・レジェンド 時空を超えた戦い」 アメリカ・ドイツ映画
9月11日18:30 厚生年金大ホール(20世紀FOX)

1899年ロンドン。世界大戦をもくろむ怪人ファントムに対抗すべく
英国政府は冒険家アラン・クォーターメインをリーダーに、
特殊技能を持つチームを結成する。
集められたのはトム・ソーヤ、透明人間、海底2万マイルのネモ船長、
ヴァンパイア、ジキルとハイドら超人達だった。
「ブレイド」のスティーヴン・ノリントン監督、ショーン・コネリー主演の
SFファンタジー。
小説の主人公に透明人間やヴァンパイヤ達がチームを結成するという
筋立てでもう「そんなアホな」と興ざめ。
何でそんな陳腐な話で映画撮ってんやろ。
監督の腕があるからアクションなどは見られたけど、キャラクター達が
荒唐無稽すぎて話に入っていけない。
ショーン・コネリーも仕事選ばなあかんわ。


「S.W.A.T.」 アメリカ映画
9月10日15:45 ソニー試写室(ソニー)

S.W.A.T.隊員のストリートは作戦遂行中のミスから同僚のギャンブルと
S.W.A.T.を追い出される。
ギャンブルは警察を辞め、ストリートは資材係に降格されたが、
ストリートにもう一度チャンスが訪れる。
古参隊長ボンドの新チームに抜擢され、S.W.A.T.に返り咲いたストリートは
仲間達と厳しい訓練を積んで晴れてS.W.A.T.隊員となる。
彼らに与えられた任務は麻薬王アレックスの護送だったが、アレックスは
自分の脱獄の賞金として1億ドル出すとマスコミに宣言した。
賞金目当ての命知らず達が襲いかかる中、ストリート達は決死の護送作戦を敢行する。
コリン・ファレル、サミュエル・L・ジャクソン主演。
麻薬王の護送という縦糸に、S.W.A.Tの訓練・活動をうまく絡めた。
でも後半のアクションはもっと盛り上がりそうなのに、なんか物足りなさが残った。


「ティアーズ・オブ・ザ・サン」 アメリカ映画
9月3日13:00 完成披露試写、リサイタルホール(ブエナ・ビスタ)

内戦下のナイジェリア。海軍特殊部隊シールのウォーターズ大尉に
米国人医師救出の命が下った。
女性医師リーナは奥地で傷ついた現地人の治療に専念していた。
精鋭部隊を引き連れリーナののもとにたどり着いたウォーターズだが、
患者達は反乱軍に捕まれば殺される、彼らも助けてくれと懇願するリーナに
彼らを助けると内政干渉になる、命令はあくまでもリーナ1人の救出だと言い張る。
しかし反乱軍はすぐそこまで迫っている。ウォーターズは命令違反をして70名の
患者達も引き連れ、決死の逃避行を決意する。
「トレーニング・デイ」のアントワン・フークワ監督、ブルース・ウィリス主演の
戦争アクション。
軍事専門家からかなり訓練を受けたようで、兵隊の動きが実に特殊部隊らしい。
しかし、エリート軍人のウォーターズが情にほだされてあっさり命令違反をするのが
いただけない。
主人公達の弾丸も「どれだけ弾あんねん」と思うぐらい無尽蔵に撃ちまくる。
アクション部分はしっかり撮っているが、ストーリー部分はお粗末。
リーナ役にモニカ・ベルッチ。


「ブルドッグ」 アメリカ映画
8月28日13:30 ヘラルド試写室(ギャガ・ヒューマックス)

ショーンは麻薬取締官。メキシコ国境で行われる麻薬取引を長年追っていたが、
持ち前の強引な捜査でついに麻薬王ルセロを逮捕した。
ところがルセロに変わってディアブロと呼ばれる謎の人物が台頭してくる。
ディアブロを追うショーンだが、ディアブロはショーンの家を襲撃、愛する妻を殺されてしまう。
復讐に燃えるショーンは、縄張りを盗られたルセロと手を組みディアブロに徹底抗戦を挑む。
「ワイルド・スピード」のヴィン・ディーゼル主演、「交渉人」のF・ゲイリー・グレイ監督作品。
手垢にまみれたありふれたお話で、たいして興味を引かない。
ヴィン・ディーゼルは主役だからと何でもかんでも仕事を受けず、もっとステップアップを考えるべき。
このままではチャック・ノリスやジャン・クロード・ヴァンダムのように、
B級アクション・スターになってしまう。
まぁ、それはそれでコンスタントに稼げるが・・・・。


「ジョニー・イングリッシュ」 イギリス映画
8月22日15:30 UIP試写室(UIP)

英国情報部のジョニー・イングリッシュは内勤のスパイ。
イングリッシュのへまで腕利きスパイ達が全滅し。
イングリッシュは憧れの現場での諜報活動をすることとなった。
英国王室から王冠を奪った悪徳実業家パスカルから王冠奪回に向かうが、
ドジなイングリッシュではすんなり取り戻せるはずもなかった。
「ミスター・ビーン」のローワン・アトキンソン主演のスパイ・コメディー。
007の脚本家に007のパロディーを書かせたようやけど、
ギャグのレベルが低い。
007のパターンなら、別に本物の007の脚本家を呼んでこなくても書けるのに。
もっとギャグをわかった脚本家にちゃんと書かせないと笑えない。
パスカル役はジョン・マルコビッチ。別にこんな映画出なくてもよかったのに。


「HERO」 中国映画
8月20日14:45 梅田ピカデリー

紀元前200年、後に始皇帝となる秦王の元に無名と名乗る男が現れる。
無名は秦王を狙う3人の刺客を倒したと言う。
秦王はあまたの刺客達に命を狙われ、誰も100歩以内には近づけなかったが、
無名は刺客達を倒した話をするため、秦王に徐々に近づくことを許される。
ところが無名は10歩以内ならどんな敵をも倒すことができる「十歩必殺」の
剣の達人だった。
「紅いコーリャン」「初恋のきた道」のチャン・イーモウ監督、
ジェット・リー主演の歴史活劇。
あまりにもワイヤーアクションを使いすぎ。空ばっかり飛んで現実離れし興ざめ。
映画の見所はほとんど予告編でやってる所ばかりで、ネタバレしてる。
チャンバラの合間のストーリーもなんか薄っぺらい。


「踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ! 日本映画
8月14日14:30 ファボーレ東宝

湾岸署管内で連続殺人事件が発生。湾岸署に捜査本部が設置されるが、
警視庁から女性キャリアの沖田が派遣される。
官僚的な沖田の指揮に青島等は反発するが、どうすることもできない。
やがて犯人を追いつめていくが、犯人の逃走を防ぐためにはレインボーブリッジを
封鎖するしかなかった。
人気テレビシリーズの映画版第2弾。
すごい人気らしいが、作品自体はテレビの延長でしかなく、
何故そんなにヒットするのかわからない。
作り手もテレビファンの期待を裏切らないように、初めから「金のかかったテレビの
スペシャル物」のスタンスで撮ってるらしい。
番組に思い入れのない人間にとっては、テレビのスペシャル番組に金を払ったような
釈然としない気持ちが残る。


「シモーヌ」 アメリカ映画
8月11日13:00 ヘラルド試写室(ギャガ・ヒューマックス)

映画監督のタランスキーの作品は、文芸作品としては評価されるが興行的には失敗続き。
今回も主演女優ニコラのわがままで映画制作は中止、このままでは監督生命までもが危ない。
そんな時、タランスキーファンの映像作家が、フルCGの画期的システムを彼に持ち込み、
はじめは相手にしなかったタランスキーだがデータを見て驚いた。
そこにいたのは、実在の人間としか思えないほど実に精巧に作られたCG美女だった。
けっしてわがままを言わず、監督の意のまま動く女優。
名女優のいいとこ取りをして作られた謎の美女シモーヌの初主演映画は大ヒット。
続編もアカデミー賞候補となってシモーヌ人気は過熱、シモーヌのスクープ合戦から
何とか秘密を守ろうとタランスキーは振り回される。
「ガタカ」のアンドリュー・ニコル監督、アル・パチーノ主演のコメディー。
ベタベタのコメディーではなく、さらりとした笑いで全体を作っているのがいい。
シモーヌ役のレイチェル・ロバーツは無機質的な美人でCG女優らしい。
スーパーモデルで演技があまり出来ないので、あまり芝居をさせずボロを
出さないようにしたのもいい。
現実と虚構で揺れ動くタランスキーの葛藤と、プロデューサーである前妻との仲も
物語にうまく絡めた。
ちょっと都合よく進む感はあるがラスト前のひねりもドラマを盛り上げた。


「パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち」 アメリカ映画
8月10日12:00 梅田ブルク7(ブエナ・ビスタ)

総督の娘エリザベスは少女時代、漂流していた少年ウィルの黄金のメダルを密かに手に入れた。
美しい娘に成長したエリザベスは、刀鍛冶となったウィルとほのかに心を通わせていたが、
父親はノリントン卿との縁談を進めていた。
ある日海賊船ブラック・パールが街を襲い、エリザベスは誘拐されてしまう。
牢獄に囚われている海賊スパロウは、ブラック・パールの行く先を知っているとウィル持ちかけ、
見事脱獄に成功。
ウィルと共にブラック・パール号を追うが、ブッラク・パールのバルボッサ船長以下乗組員は
実は呪いをかけられた亡霊達だった。
「アルマゲドン」「パール・ハーバー」のジェリー・ブラッカイマー製作、「ザ・リング」の
ゴア・ヴァービンスキー監督、ジョニ・デップ主演の娯楽大作。
昔ながらの海賊活劇だけど、何故か昔から観客は海賊に味方してしまう。
海賊はただの「盗人」ではなく、何か「自由人」としての憧れが観客にあるよう。
特にジョニー・デップがかっこいい。
メイクといいファッションといいキャラクターといい、完全に一人勝ち。
画に描いたような海賊スタイルだけど、まさに適役。
海賊映画復権に大きく貢献した。


「NOVO ノボ」 フランス映画
8月5日15:30 東映試写室(ギャガ・コミュニケーションズ、Gシネマグループ)

新しい職場でイレーヌはグラハムに恋した。明るいが、どこかつかみ所のないちょっと変わった男性。
今までにないタイプの彼だった。
すぐに二人は付き合い始めたが、どうもグラハムの様子がおかしい。
実はグラハムは記憶障害で、5分経つと記憶はどんどん消えていくのだった。
はじめは毎回新鮮だと思っていたイレーヌだが、やがて彼の心に何とか自分の記憶を残そうとする。
シャネルのモデルも務めるアナ・ムグラリスがオールヌードも辞さずイレーヌ役を体当たりで
演じている。
記憶障害の主人公の物語としては、どうしても「メメント」を意識してしまうし、
現に映画の中でもイレーヌが自分の痕跡を残そうとグラハムの身体にマジックで文字を書こうとすると
「そんな事したら身体中文字だらけになってしまう」と、「メメント」を意識したセリフもある。
「メメント」のすぐ後ではどうしても損をするが、「恋」の料理の仕方が、どうももたついた感じが
否めない。
試みはよいが「ネタ」を生かし切れずもてあましてしまった。
共演は「オープン・ユア・アイズ」のエドゥアルド・ノリエガ。


「ファム・ファタール」 アメリカ映画
7月29日13:00 ヘラルド試写室(ヘラルド)

カンヌ映画祭会場。
ゲストのヴェロニカが身につけた1000万ドルのダイヤがちりばめられたビスチェ強奪作戦は、
実行犯の一人ロールが仲間を裏切って宝石を持って逃走、首謀者のブラック・タイは重傷を負い捕まる。
7年後、自分にそっくりなリリーになりすまし、アメリカ大使夫人に収まったロール。
しかし、その姿はいっさい公表されなかったが、カメラマンのニコラスがスクープし、
出所してきたブッラク・タイに居所が知られてしまう。
ローラはニコラスを巻き込んである計画を立てる。
ブライアン・デ・パルマ監督最新作。主演のローラには「X−MEN」シリーズ、ミスティーク役の
レベッカ・ローミン=ステイモス、共演はアントニオ・バンデラス。
物語の2/3まで来たところで「こんなんありかいな」と唖然とした。
これはもうどんでん返しと言わんやろというような展開。
だから残りの1/3がアホみたいに見えてしまった。
魅力ある脇役陣がいて、おもしろくなりそうなのに比重が軽く、バンデラスも扱いが悪い。
ローミン=ステイモス一人の映画。
音楽の坂本龍一も監督のリクエストらしいが、まんま「ボレロ」のスコアを書き、
オリジナリティーがなさ過ぎる。
デ・パルマはもうあかんのかなぁ。


「インファナル・アフェア」 中国(香港)映画
7月18日18:30 完成披露試写、リサイタルホール(コムストック)

ラウは香港マフィアの構成員となったが、警察をスパイするため、ボスのサムの命令で
警察学校の入学を命じられる。
同じ頃警察学校では、成績優秀なヤンがウォン警視から見込まれ、潜入捜査官として
マフィアに送り込まれた。
ボスからの情報でライバル組織摘発に力を入れ、ラウは出世しサムも勢力を拡大していった。
一方ヤンも今ではサムの片腕にまでのし上がったが、警察官としてのアイデンティティーが
崩壊しつつある自分に悩んでいた。
そしてある日、警察、マフィア双方に内通者がいることが発覚する。
「恋する惑星」「HERO」のトニー・レオン、「七福星」「酔拳2」のアンディー・ラウ主演。
ラウとヤンは一時期同じ警察学校にいたが、二人の間に友情が無いのがいい。
相手方にいる顔の見えないスパイにより、自分の身が危なくなっていく。
物語はわかりやすく、二人の心の葛藤もちゃんと描かれている。
ラストの処理もいい。
ハリウッドでリメイク権の争奪となり、ワーナーがブラピでリメイクするそうな。
物語は単純だけどアイディアの勝利。ケリー・チャンも花を添えている。


「28日後...」 イギリス・アメリカ・オランダ映画
7月16日13:30 東映試写室(20世紀FOX)

ジムはロンドンの病院で目が覚めた。バイク事故で頭を打ち、
意識不明のまま28日間眠り続けていたのだ。
ところが病院はもぬけの殻、ロンドンの街もひとっこ一人いない。
残っている人を求めて入った教会で、ジムは初めて人と出会うが彼らは凶暴化し
ジムに襲いかかってきた。
危ないところをマークとセリーナに助けられ、話を聞くと感染性の高いウイルスによって
人は凶暴になり、感染者の血を浴びると瞬時に感染するので、肉親でも感染者はすぐに殺せと言う。
やがて合流したフランク親娘と共同生活を始めるが、軍からのラジオ放送を傍受、
基地のあるマンチェスターへ向けて決死の移動を始める。
「トレインスポッティング」「ザ・ビーチ」のダニー・ボイル監督作品。
一見ゾンビ映画に見えるが、テーマは人間の中にある「暴力性」で、
後半は生存者同士が核となる。
潜在意識にある暴力性を抑える薬の失敗から生まれたウイルスによって人が凶暴化するが、
感染者がまんまゾンビ。
ゾンビ映画に見られたくなかったら、もう少し感染者の設定を工夫しないと
視点を変えただけのゾンビ映画になってしまう。
感染者が夜行性で昼間は街を歩いても怖くなかったり、知能が極端に低かったりと
どうも都合よすぎる。


「閉ざされた森」 アメリカ映画
7月15日13:00 ソニー試写室(ソニー)

嵐の夜、パナマのクレイトン基地から1機のヘリがレンジャー部隊の訓練のために飛び立ったが、
ウエスト軍曹以下6名の兵士は消息を絶つ。
17時間後捜索ヘリが見たものは、仲間同士で撃ち合う兵士の姿だった。
ダンバーと重傷のリーヴァイが救助されたが、取り調べにダンバーは黙秘を続ける。
捜査に当たっている女性捜査官オズボーン大尉では早期解決が無理と、上官のスタイルズ大佐は
昔なじみで元レンジャー隊員の麻薬捜査官トムを尋問のために呼び寄せる。
生存者二人の証言が食い違い、オズボーン大尉とも衝突するトム。
捜査は難航したが、やがて一つの陰謀が浮かび上がってくる。
「ダイ・ハード」「レッド・オクトーバーを追え」のジョン・マクティアナン監督、
ジョン・トラボルタ主演作品。
トラボルタは「将軍の娘 エリザベス・キャンベル」でも軍隊内の捜査官という
同じような役をやってるので、またかと思ってしまう。
生存者二人の証言が食い違う「羅生門」形式の謎解きだけど、
兵士の顔と名前がわかりにくいので混乱する。
最後に謎解きがされるが、見終わっても一つだけ疑問が残ったまま。
何かスッキリせん映画やった。
共演はサミュエル・L・ジャクソン。


「コンフェッション」 アメリカ映画
7月11日15:30 ヘラルド試写室(ギャガ・ヒューマックス)

チャック・バリスは女にモテたいがためにテレビ局の見学コース・ガイドの職を得る。
やがて臨時職員となり、彼の作った曲を有名歌手が歌って大ヒット、女遊びにふけっていた。
発展家のペニーと出逢い、番組企画を思いついたチャックだが、会議でボツとなる。
失意の彼に接触してきたのはなんとCIAのバード。チャックを秘密工作員としてスカウトする。
CIAで殺人技術を身につけたチャックはCIAの工作員として、海外で非合法活動をする羽目になってしまった。
しかし彼の企画が通り、次から次に番組がヒット、一躍売れっ子プロデューサーとなり自らも
司会を務めるようになる。
こうしてチャックは売れっ子プロデューサーと殺し屋という二つの顔を使い分けるようになったが、
やがて番組も低迷し、精神が消耗していく。
実在のTVプロデューサーの自伝をもとにした、ジョージ・クルーニー初監督作品。
はじめはコメディータッチだが徐々にシリアスになっていく。
ともすればどっちつかずの中途半端な映画になってしまうところを、何とか踏みとどまった。
人気番組のプロデューサーが実はCIAの殺し屋だったてな話は、実話にしても陳腐だから、
はじめからシリアスに描かずコメディータッチで描いたのは正しかったかも知れない。
チャック役は「グリーンマイル」のキレた囚人役のサム・ロックウェル。
脇をドリュー・バリモア、ジュリア・ロバーツ、ルドガー・ハウアーらが固めている。
もちろんクルーニーも。


「永遠のマリア・カラス」 イタリア・フランス・イギリス・ルーマニア・スペイン合作映画
7月11日13:00 ヘラルド試写室(ギャガ・コミュニケーションズ、Gシネマグループ)

オペラ界のスーパースター、マリア・カラスは声が衰え、愛するオナシスとも別れ、
パリの高級アパートで隠遁生活を送っていた。
そこにかつての仕事仲間でプロモーターのラリーが、ある企画を持ち込む。
その企画とは、全盛期に録音されたレコード「カルメン」の歌声を最新の技術で、映像にかぶせ
オペラの映画を撮ろうという物だった。
世界一有名な歌劇「カルメン」はカラスが一度も演じたことがない魅力的な役だったが、
嘘は嫌いと言うカラスを、「昔のレコードとはいえ、君の声には違いない」とラリーは説き伏せ、
カラスの胸に再び情熱の炎が燃え上がるのだった。
オペラの演出も手がけ、カラスとも親交が深かった「ロミオとジュリエット」の
フランコ・ゼフィレッリ監督作品。
カラスをよく知る人物なら、彼女の一生を忠実に伝えようとするものだが、
ゼフィレッリ監督は彼女の精神と生き様を伝えるにとどめ、レコードは吹き込んだが
一度も演じていない「カルメン」の映画化という、フィクションでドラマ性を高めた。
これが大成功。
見応えのある劇中劇「カルメン」が物語を盛り上げる。
映画「カルメン」製作を軸に、カラスの完璧主義とも言える仕事に対する厳しい姿勢、
潔いかくしゃくとした姿勢、悲しみなどが織り込まれる。
カラスに「愛と哀しみのボレロ」「隣の女」のファニー・アルダン、プロモーターのラリーに
ジェレミー・アイアンズ。


「サハラに舞う羽根」 アメリカ・イギリス映画
7月10日18:30 完成披露試写、リサイタルホール(アミューズ)

1884年、世界の1/4を支配する英国は盟主として君臨していた。
軍人一家で将軍の息子ハリーは周囲の期待を一心に浴びエリート士官として前途洋々、
美しいエスネとの結婚も決まっていたが、スーダンへの派兵が決まった時、疑問を感じる。
砂漠しかない土地を力で制圧することが国にためになるのか、エスネを置いて戦う事への不安もあり、
翌日ハリーは除隊したが、友人達から臆病者の印「白い羽根」を送られる。
そして恋人エスネからも白い羽根が・・・。
父からも勘当され失意にくれるハリーはアフリカで苦戦を強いられる友人達を救うため、
単身スーダンへ向かった。
「エリザベス」のシェカール・カプール監督、「ロック・ユー」「チョコレート」の
ヒース・レジャー主演作品。
戦争に疑問を感じて除隊した男が、単身アフリカの戦場に友達を救いに行くという行為がまず不自然。
冒頭で疑問を感じてしまうと、もう主人公に共感できず冷めた目で物語を見てしまう。
砂漠で行き倒れになっているところを偶然英語がしゃべれるアフリカ人に助けてもらって
何度も命を救われるなど、都合よすぎる。
「エリザベス」の手腕を買われ、時代物に定評のあるカプール監督でも、この筋立てでは
どうしようもない。
画はうまいねんけどなぁ。


「名もなきアフリカの地で」 ドイツ映画
7月9日15:30 ヘラルド試写室(ギャガコミュニケーションズ、Gシネマグループ)

ユダヤ人の幼い少女レギーナは迫害を逃れるため弁護士の父ヴァルターのいるケニアに
母イエッテルとやってきた。
農場とは名ばかりの荒れた土地で粗末な食べ物と不自由な暮らしに上流育ちのイエッテルは
失意の日々を過ごしていた。
心の支えはこの地に長年住み、よきアドバイザーであるジュスキントと、ケニア人料理人の
オウアだった。
特にオウアは幼いレギーナを可愛がり、レギーナも自然の大地ですくすくと育っていった。
しかし戦争が始まり、英国軍の収容所に入れられたり、農場がイナゴの大群に襲われたり苦難が続く。
やがて戦争は終わりレジーナは美しい娘に成長したが、家族の心は離ればなれになっていた。
アカデミー外国語映画賞を受賞したカロリーヌ・リンク監督作品。
幼いレジーナ役のレア・クルカが可愛くて賢い。2000人の中から選ばれたそうやけど、
前半はこの子のかわいさに持って行かれる。
ドイツ人少女とケニア人料理人オウアの心温まる交流映画だけではなく、
ユダヤ人の悲しみ、少しずつずれる各人の微妙な心のひだもちゃんと紡がれている。
静かだけどしっかり作られた映画。


「フォーン・ブース」 アメリカ映画
7月9日13:30 完成披露試写、リサイタルホール(20世紀FOX)

スチュはニューヨークのパブリシスト。芸能関係の宣伝やパーティーなどの仕掛け人だ。
ブランドスーツを着こなし、2台の携帯を使い分け、口先だけで世間を渡ってきた。
アシスタントに指示を出し、一人タイムズスクエアの電話ボックスに入ると新人女優を口説きだした。
電話を切って出ようとすると、ベルが鳴る。
反射的に取ったスチュだが、電話の相手は彼のことを何でも知っていた。
そして高性能ライフルで狙っている。妻に不貞を告白しろと迫る。
電話を使いたいから早く出ろとスチュに殴りかかったポン引きが狙撃され、
スチュは犯人と間違えられ警察に包囲される。
「依頼人」「バットマン/フォーエバー」のジョエル・シューマカー監督、コリン・ファレル主演作品。
電話ボックスに掛けてくる電話の声が電話らしくなく、まるでナレーションのような音質。
この部分が妙に引っかかる。
刑事役のフォレスト・ウィテカーも妻も物わかりがよすぎるし、
電話ボックスから隙を見て逃げようと思えば逃げられそうなのに、ちょっとストーリーに無理がある。
ニューヨークの真ん中で狙撃者に電話で脅迫されるというこのパターン、
すでにウェズリー・スナイプスの「スナイパー」で先にやられてるしなぁ。
料理の仕方が今ひとつ。


「ハルク」 アメリカ映画
7月8日19:20 完成披露試写、ナビオTOHOプレックス(UIP)

若き科学者のブルースは事故で致死量のガンマー線を浴びてしまうが、一命をとりとめる。
しかし体内で何かが覚醒し、怒りの感情が起こると緑の巨人に変身してしまう。
軍は彼を捕獲しようとするが、彼を怒らせれば怒らせるほどパワーは強大になり、
軍隊でも歯が立たない。
しかしブルースのかつての恋人ベティーだけがブルースの怒りを鎮めることが出来た。
そこに死んだはずのブルースの父が現れ、ブルースの身体の秘密を明かす。
アメリカン・コミックの映画化。
昔のハルクは変身してもマッチョになるだけだったが、このハルクは怒りでどんどん大きくなる。
最後はキングコングみたい。
跳躍力もすごすぎて、びゅんびゅんジャンプで飛んでいく。
近代装備の軍隊との戦いはおもしろく、イラクで使われたブラスター爆弾らしき物も映画で初めて
登場した。
変身したハルクはCGだけど、クォリティーはちゃちなところと、よくできたところとムラがある。
最後の父親との戦いは、やり過ぎ。なんやようわからん。
また続編作るねやろうなぁ。


「エデンより彼方に」 アメリカ映画
7月8日13:00 ヘラルド試写室(ギャガ・コミュニケーションズ、Gシネマグループ)

1957年コネティカット。キャシーは会社の重役で優しい夫と2人の子供に囲まれ、
人もうらやむ何不自由ない優雅な家庭を営んでいた。
しかし、ある日夫の秘密を知り、幸せな家庭が傾き出す。
何とか元の幸せな家庭に修復しようとするキャシーだが、黒人庭師に惹かれる自分を感じていた。
人種的偏見を持たないキャシーの行動は保守的な小さな町でスキャンダルとなり、
庭師を解雇せざるを得なくなる。
50年代のメロドラマを再現した映画だが、そのディテールのこだわりに驚かされる。
50年代のファッションや家具調度品は当然として、当時のメロドラマの定番をきっちり再現している。
どの車も新車のようにピッカピカ(庭師のトラックも新車同然)、登場人物全員が大人と言わず子供と言わず
きちっと髪をなでつけてる(庭師も)。
服装もファッション雑誌から抜け出たようにきれい(庭師の作業着もきれい)。
言葉遣いも行儀いい。
画面の色合いも昔のカラーフィルムのような、少しきつめの色をわざと出した。
物語の展開は、昔ながらの古くさい物だけど、妙にハマってしまう。
ジュリアン・ムーアのバタ臭い顔はこの時代のヒロインにピッタリ。
夫役のデニス・クエイドも頑張っている。
二人のしっかりした演技もあるが、ちゃんと金を掛けて昔のメロドラマを再現したから、
この映画は成功したのだと思う。
あの手この手でいろんな映画作ってくるなぁ、アメリカは。


「ゼロ・トレランス」 スウェーデン映画
6月27日 ビデオ(WOWOWにて収録)

クリスマスの夜、宝石店を襲った強盗を発見し追跡する刑事。
追いつめるが、銃撃戦の流れ弾で民間人が死に、犯人の一人は射殺するも一人は逃げられる。
現場に居合わせた目撃者の証言から犯罪歴のある男を洗い出すが、一度は証言した目撃者達が
次々に証言をくつがえしていく。
容疑者宅に乗り込んだ刑事は罠にはまり、暴力警官として逮捕される。
スウェーデンで大ヒットしたらしいが、証言をくつがえす課程が
もっとミステリアスなものかと思ったら実に単純なことだった。
主人公の刑事に華がない。目新しい所もなくTVの刑事物のような映画。


「ジェームズ・キャメロンのタイタニックの秘密」 アメリカ映画
6月27日20:00 完成披露試写、天保山アイマックスシアター(ギャガ・コミュニケーションズ)

「タイタニック」のジェームズ・キャメロン監督が、深海に沈む本物のタイタニックを
撮影した巨大3D記録映画。
キャメロン監督はよほどタイタニック号が好きなようで、映画「タイタニック」の成功後、
深海の水圧に耐えるカメラや狭い所にも入って撮影できる小型ロボット潜行艇などを開発し、
自らも深海探査艇に乗り込み撮影を敢行した。
映画監督なので記録映画といえどもライティングにこだわり、こちらも深海用の照明機材を開発し、
ライティングもよく、深海に横たわるタイタニックの姿を圧倒的なリアリティーでスクリーンに再現した。
3Dの巨大画面なので観客もその場にいるような迫力。
朽ち果てた船体にCGの再現画像をオーバーラップさせ、往事の豪華な船内の様子を重ね合わせる。
映画「タイタニック」の使い回しかと思ったら新たに作ってた。
本物のタイタニックを間近に見せるだけでなく、荒波での潜行艇の回収作業、
引っかかったカメラロボットの救出劇など見せ場もあり、さすがに記録映画でも娯楽性を忘れていない。
のんびり座って本物のタイタニックが間近に見られるなんてすごいなぁ。


「マトリックス リローデッド」 アメリカ映画
6月7日16:00 梅田ブルク7

人間とコンピューターの戦いを描いたシリーズ第2弾。
増殖するエージェント・スミス、ツインズなど魅力ある強敵が登場しグレードアップ。
物語はややわかりにくいが、金のかかったVFX映像に身をゆだねて
翻弄されているだけでいいのかも知れない。
先日テレビでメイキングをやってたけど、CGと思われたところは生身の人間がやっいて、
人間がやってると思ったところはCGだったり、意外だった。
高速道路を疾走するトリニティーも本当にバイクに乗って走ってたし。
CGにすごい金は掛けてるけど、結局は生身の人間の迫力には勝てないと言うことか。
とにかくこの映画は、映画というエンターテインメントの表現の見本市として、
最新映像表現を楽しむ映画なのだと思う。
このシリーズの後のウォシャウスキー兄弟はどこへ行くのだろう。


「ライフ・オブ・デビッド・ゲイル」 アメリカ映画
6月6日13:00 UIP試写室(UIP)

哲学者で死刑反対論者のデビッド・ゲイルは、同僚女性への暴行殺人で死刑判決を受けた。
そんなゲイルから女性記者ビッツィーに、死刑執行までの3日間、
単独インタビューに応じると連絡があった。
毎日刑務所でゲイルの話を聞くビッツィーは、やがてゲイルが無実であるという確信を深め、
助手のザックと真相究明に乗り出すが、刑の執行まであまりにも時間は短かった。
「ミッドナイト・エキスプレス」「ミシシッピー・バーニング」のアラン・パーカー監督、
ケビン・スペイシー主演作品。
物語の必然性、鍵を握る脇役の絡め方、謎解きの課程など脚本の良さもあるが、
重いテーマを正攻法でどっしり撮っているパーカー演出は見事。
ラストはハリウッドらしからぬ終わり方だけど、物語としてはこれが正解だと思う。
女性記者役のケイト・ウインスレットも健闘しているし、ゲイルの同僚役のローラ・リニーもいい。
助手役のガブリエル・マンはこれから人気が出ると思う。
プロデューサーはニコラス・ケイジ。


「風の絨毯」 日本・イラン映画
6月5日13:30 ソニー試写室(ソニー)

飛騨高山でペルシャ絨毯の販売をしている永井は、新しくできる祭り屋台の後ろ幕に
ペルシャ絨毯を使うことを提案し、妻の絹恵の図案でイランに絨毯を発注した。
ところが絹恵は交通事故でなくなり、悲しみにくれる永井と娘のさくらは、絨毯を受け取りに
イランに向かうが、手違いで絨毯は出来ていず、祭りに間に合わない事がわかった。
高山とイランを全編ロケで撮影。監督はイラン人のカマル・タブリーズィー。
日本からは榎木孝明・三國連太郎・工藤夕貴らが出演、工藤はアシスタント・プロデューサーにも
名を連ねている。
少女さくらとイラン少年ルーズベとの淡い恋を絡めながら、何とか絨毯を祭りに間に合わそうと
奮闘する人々が描かれているが、さくらとルーズベとの掘り下げ方が浅く、
もっぱら絨毯製作の工程に重点が置かれている。
まるでよくできたペルシャ絨毯紹介ビデオのよう。
さくら役の柳生美結は可愛いけど芝居は今ひとつなので、二人の恋物語は掘り下げにくかったのかもしれん。
ラストは何の工夫もなく尻切れとんぼで終わる。


「キリクと魔女」 フランス映画
6月4日13:30 ヘラルド試写室(アルバトロス・フィルム)

アフリカのキリクは母の体内ですでに話し、自力で生まれてきた小さな男の子。
キリクの村は魔女カラバの呪いで水は枯れ、魔女に挑んだ男達は全部食べられ、
村には女子供しか残っていなかった。
なぜカラバは意地悪するのか、キリクは危険を冒して禁じられたお山の賢者に
聞くために旅に出た。
アフリカを舞台にしたミッシェル・オスロ原作・脚本・監督のフランス・アニメ作品。
日本語版翻訳は「火垂るの墓」「おもひでぽろぽろ」の高畑勲が担当している。
ディズニーや宮崎アニメとは違い、実に平面的な画だけど、それがかえって新鮮で、
色使いがまるで絵画を観てるようですばらしい。
物語や展開、画造りは単純で緩やかだけど、アフリカのお伽話を聞いているようで
素朴な物語にハマってしまう。
主人公がずっと全裸なのも珍しい。 


「光の旅人 K−PAX」 アメリカ映画
6月3日 ビデオ(WOWOWにて収録)

ニューヨークの駅で強盗の仲間と間違われて逮捕されたプロートは、
取り調べで自分は1000万光年離れたK−PAX星から来たと話し、精神病院に送られる。
治療に当たるパウエルははじめは誇大妄想の患者だと思っていたが、理路整然と話すプロートに
妙な説得力を感じる。
試しに高名な天文学者にプロートを会わせ、自分の星の説明をさせると、
天文学の謎が一気に解けてしまった。
おまけに入院患者達はプロートの不思議な影響で症状が改善されていく。
プロートは果たして本当に異星人なのか、パウエルは独自の調査を始める。
ケビン・スペイシー主演のヒューマン・ファンタジー。
地球は光が強いからと常にサングラスをして、物腰が柔らかく知的で神秘的な主人公には
ケビン・スペイシーは適役だった。
医師役のジェフ・ブリッジズも抑えめだけと渋い演技で脇を支えた。
宇宙船やワープなどSF的な物をいっさい登場させないところがこの映画の魅力。
ラストの処理が見事。人を優しい気持ちにさせるいい映画。 


「スパイダーパニック!」 アメリカ映画
6月2日 DVD

トラックの荷台から有害物質の容器が転落し、それによって蜘蛛飼育場の蜘蛛が巨大化した。
蜘蛛好きの少年マイクは巨大な蜘蛛の脚を発見し、保安官の母サムに報告する。
やがて蜘蛛たちは人間を襲いだし、サムの幼なじみのクリスらと市民を
ショッピングセンターに避難させるが、蜘蛛たちは容赦なく襲ってくる。
「インディペンデンス・デイ」のローランド・エメリッヒが製作したB級パニック映画。
巨大化の原因がトラックから落ちた有害物質だったり、ショッピングセンターに逃げ込んだりと
セオリー通りに話は進み、わざと「B級」を撮ろうと意図されているよう。
巨大な蜘蛛はCGで描かれているが、巨大化したからといってスローな動きではなく、
本物の蜘蛛と同じように素早く動くので逃げるのが大変。
この種の「B級物ファン」向けに作られたパニック映画。


「スパイキッズ2 失われた夢の島」 アメリカ映画
6月1日 DVD

カルメンとジュニは前回の活躍でOSSに新設されたキッズ部門で、
スパイとして働いていた。
ところがライバルのギグルズ兄妹にお株を奪われ、おまけに次期局長の座もギグルズの父
ダナゴンに持って行かれてしまった。
そんな時大統領が持っていた秘密兵器トランスムッカーが何者かに盗まれ、
カルメンとジュニはギグルズ兄妹を出し抜いて不思議な生物のいる島に向かう。
ロバート・ロドリゲス監督「スパイキッズ」第2弾。
今回もバンデラスらは脇役で、ライバルのキッズスパイが登場したり
ジュラシック・パークのような不思議生物の島などいろんな要素を入れグレードアップ。
引退した祖父母スパイも登場し、ファミリー・スパイとして家族ぐるみで事件解決に当たる。
全体に子供向けだけど、ロドリゲスは案外この年代の子供向け映画を撮るのが好きみたいで、
楽しんで撮ってる感じがする。


「ぼのぼの クモモの木のこと」 日本映画
5月31日 DVD

ラッコのぼのぼのが飼っていたコゲトリ虫がいなくなり、シマリス君と森を探すが見つからず
悲しみに暮れるぼのぼの。
丘の上のクモモの木の下に行けば悲しいことを忘れられると聞いたぼのぼのは丘に向かうと、
ポポという男の子が丘で遠くを見つめていた。
ポポは父子家庭で丘の上で毎日誰かを待っているらしい。
はじめはぼのぼの達を避けるようにしていたポポだけど、やがてぼのぼの達と親しくなる。
そんなある日、森の動物が大切にしているクモモの枝が折られ、
毎日木の下にいるポポに疑いがかけられる。
いがらしみきお原作の2002年フルCGアニメ作品。
ふさふさのぬいぐるみのようなリアルなぼのぼのに驚かされる。
「モンスターズ・インク」のサリーみたい。
ピクサーでなくてもあのクォリティーでCGアニメが出来るんや。
ぼのぼのの世界がCGで見事に作られた。とてもきれい。
物語はゆったりした独特の「間」で進み、ゴンチチの音楽と相まって大人も子供もほっこり、
ほのぼのさせられる。


「ワイルド・スピード」 アメリカ映画
5月30日 ビデオ(WOWOWにて収録)

ロサンジェルス、深夜に町中で行われるカーレースに、若者達が自慢の改造車で集まってくる。
その中でもドミニクは抜群のドライブセンスとチューニング技術を持ち、賭レースで大金をせしめる
カリスマだった。
そこにブライアンという新顔が現れそのドライブテクニックで観客の注目を集め、ドミニク達に接近する。
実はブライアンはチューニングカーでトラック強盗をする一団の捜査のために潜入したおとり警官だった。
「ピッチ・ブラック」「トリプルX」のヴィン・ディーゼル2001年主演作。
レースやカー・チェイスシーンを期待したけどそれほどでもなく、チューニングカーで
トラックを襲うという行為も理解できん。
そんな特殊な車で強盗すれば足が付きやすいし、奪ってからも大きなトレーラーは足手まとい。
「カーレース」と「事件」を無理矢理くっつけたような映画。
ドラマ性はともかく車のシーンだけでももっとちゃんとすれば楽しめたのに。


「めぐりあう時間たち」 アメリカ映画
5月21日11:00 梅田ピカデリー

1923年イギリスの女流作家ヴァージニア・ウルフは精神を病みながら、
療養先のロンドン郊外で「ダロウェイ夫人」の執筆に取りかかっていた。
1951年アメリカ、ロサンジェルス。身重の主婦ローラは優しい夫と幼い息子に囲まれ、
何の不満もない幸せな家庭のはずなのに心に空洞を抱えていた。
2001年ニューヨーク。クラリッサは自分を「ミセス・ダロウェイ」と呼ぶ旧来の友人で、
詩人のリチャードが有名な賞を受賞し、祝賀会の準備に奔走するが、リチャードはエイズに冒され
世捨て人のような生活をしていた。
時代を超えた3人の女性の心の葛藤が交錯する「リトル・ダンサー」のスティーブン・ダルトリー
監督作品。
ニコール・キッドマンが付け鼻を付けてアカデミー主演女優賞を見事受賞。
ジュリアン・ムーア、メリル・ストリープも細かな心のひだを表現したが、物語が重い。
何がそんなに彼女たちの心を蝕むのか描き切れてない。
3人ともレズっ気があり、愛する人もいて、また愛されてもいるのに満たされない。
脇役陣も実力派揃いで、静かだけどしっかりとした演技で物語を支えているが、
何かスッキリしない。
2と3は関連があるが、1は他の時代に絡んでない。3つの時代の女性を交錯させるアイデアはいいが、
も一つ紡ぎ切れてない。


「オール・アバウト・マイ・マザー」 スペイン映画
5月20日 ビデオ(WOWOWにて収録)

マヌエラは息子と二人暮らしの母子家庭。息子は父の顔を知らず、
マヌエラも別れた夫のことを息子に話そうとしない。
芝居を観に行った帰り、息子がベテラン主演女優にサインを求めて車の後を追い、
交通事故で亡くなってしまう。
失意のマヌエラは昔過ごしたバルセロナに旅立つ。
1998年ペドロ・アルモドバル監督作品。
この映画かなり両方のゲイが登場し、男も女も登場人物全員が女性的。
公開当時とっても話題になってたし、ポスターの構図が昔の名作映画的で、
ちょっと期待したけどそんなにいい映画だと思わない。
登場人物が濃い割に、それぞれの掘り下げ方が浅いから違和感を覚えたのかも。


「DENGEKI 電撃」 アメリカ映画
5月18日 ビデオ(WOWOWにて収録)

ボイド刑事は強引な捜査のため、上司にパトカー勤務を言い渡されるが、
警察の保管庫からヘロインが盗まれる事件が起こり、相棒と捜査に乗り出す。
スティーブン・セガールのアクション映画。
セガールは今やB級アクションスターの代名詞になってしまった。
(かつてはチャック・ノリスだったけど)
セガールの悲劇は特技が合気道だと言うこと。
空手やカンフーならもっと派手に立ち回れるけど、合気道は動きが地味。
すごいことやってもさらりと流れてしまうので、凄さが伝わらない。
おまけに物語も手あかにまみれまくりの陳腐なものだし、
都合よく話が進む。
いったいどんな人が毎回見てるねやろ。


「突入せよ!あさま山荘事件」 日本映画
5月17日 ビデオ(WOWOWにて収録)

1972年2月、長野県あさま山荘に連合赤軍が人質を取って立てこもった。
警視庁長官より現場指揮者として任命された佐々だったが、攻めにくい山荘の地形、
マイナス15度の気温、全く交渉に応じず銃を乱射する犯人達に、メンツにこだわった
長野県警と警視庁組の対立など、ありとあらゆる障害が佐々の前に立ちはだかる。
あまりにも有名な事件だが、単純に犯人と警察の対立構造にせず、犯人に向かう以前に
警察内部の仲間割れ的対立がおもしろい。
脇役人も藤田まこと・伊武雅刀・宇崎竜童ら安定した演技で物語を支え、何より主役の
役所広司はいるだけで画面が締まる。もちろん演技もいい。
ハイライトの突入シーンだけでなく、それ以前もダレさせずにグイグイ観客を引っ張る
原田眞人監督の演出は見事。
ただ、長野県警機動隊役の荒川良々は、この役に本当に必要だったのだろうか。


「ロミオ&ジュリエット」 アメリカ映画
5月16日 ビデオ

シェークスピア原作の悲恋物語を現代に置き換えた96年の作品。
対立するギャングの息子と娘の恋物語として現代的にアレンジしているが、
原作を意識したセリフが随所にあり、そこだけなんか古くさい。
ただ時代を現代に置き換えただけで、それほど工夫が見られない。
ディカプリオの相手役にしてはクレア・デインズは少し役不足。
それほど美しいとは思わない。この物語はやはり美男美女が主役をやらないと
感情移入できない。


「ロミオとジュリエット」 イギリス・イタリア映画
5月16日 ビデオ

1450年頃のイタリア、ヴェロナ。街を2分する名門モンタギュー家とキャピレット家は
仇敵同士。ところが舞踏会で両家の息子と娘が恋に落ち、そこから悲劇が始まる。
シェークスピア原作の悲恋物語。
史実に忠実なコスチュームなのだろうけど、この時代の男どもはお間抜けな服装。
皆道化のような派手なタイツで股間に飾りが施され、性器に注目を集める。
いくらレナード・ホワイティングが美男子でも、妙に間抜けに見えてしまう。
しかし、当時のオリヴィア・ハッセーは本当に清楚で美しい。
フランコ・ゼフィレッリ監督は古典として正攻法で撮ってはいるが、主役の若い二人の瑞々しさも
ちゃんと出した。


「アメリ」 フランス映画
5月14日 DVD

アメリは子供の頃から空想好きの女の子。
カフェで働いているが、他人に幸せないたずらをする喜びを発見し、
他人の人生にこっそり介入しては悦に入っていた。
ある日アメリは、自動証明写真機の下を漁ってる青年を見つけた。
彼は証明写真のコレクターで、捨てられた没写真を拾ってはご丁寧にアルバムにストックしていた。
彼に惹かれたアメリだが素直に接近する事が出来ない。
方々に幸せないたずらを仕掛けながら、彼に近づくための作戦を立てるのだった。
「デリカテッセン」「エイリアン4」のジャン=ピエール・ジュネの2001年監督作品。
ジュネは前から好きな監督だったけど、ジュネ作品の最高傑作。
すばらしい感性と想像力。どんな脳みそしてるねやろ。
観ると少し幸せになる映画。
この独特の世界とほんのりしたユーモアは、ハリウッドでは絶対作れない。
ジュネは10年で4本しか撮ってない。次回作までまた何年か待たされるねやろうなぁ。
アメリ役のオドレイ・トトウはハマリ役。逆に、これからしばらくは「アメリ」から抜けるのに
苦労すると思う。


「ロスト・イン・ラ・マンチャ」 アメリカ・イギリス映画
5月14日15:30 ヘラルド試写室(シネカノン)

「未来世紀ブラジル」「12モンキーズ」のテリー・ギリアム監督の新作「ドン・キホーテを殺した男」の製作過程を追ったメイキング映画。
CM撮影中のCMプロデューサーが17世紀にタイムスリップし、サンチョ・パンサに間違えられ、
ドン・キホーテと旅をするという、ギリアム監督が長年暖めてきた「ドン・キホーテ」の物語。
ヨーロッパで何とか資金を集め、主役にジョニー・デップも押さえた。
各国混成軍のスタッフと何度もテストを繰り返し、ロケ先のスペインに乗り込んだが、
撮影が始まると頭上を空軍機が轟音をとどろかせて飛び回るわ、大雨で機材は流されるわ、
次から次に撮影隊に災難が襲う。
そしてとうとうキホーテ役のジャン・ロシュフォールが病気で倒れて撮影は中断。
撮影スケジュールは限られている。中断してる間も資金は消費され、やがて映画は保険会社の手にゆだねられ
頓挫した。
メイキングの傑作に「地獄の黙示録」の製作過程を撮った「ハート・オブ・ダークネス」がある。
しかし「ハート〜」は、いくら苦難の道でもちゃんと映画が完成しカンヌで賞も獲ったからいいが、
この映画は完成せず、メイキングだけが公開されるというきわめて珍しいケースとなった。
かなり状況的には悲惨なのだが、どこかおかしさがつきまとう。
時々、これはギリアムのジョークで、本当はメイキングの形をとったギャグ映画なのではと思ってしまう。
モンティー・パイソンのスタッフだったギリアムらしく、随所にモンティー・パイソン風のアニメが
挟み込まれているので、余計そう感じる。
ギリアムはしばらくこのショックから立ち直れんやろうなぁ。 


「トレーニングデイ」 アメリカ映画
5月13日 DVD

ロサンゼルス市警の警官ジェイクは、やっと刑事課への配属が認められ麻薬課の見習いとなった。
配属の初日は刑事としての適正を見極められるトレーニングデイ。
査定をするのはベテラン刑事のアロンソ。アロンソの教えを一生懸命吸収しようとするまじめな
ジェイクだが、アロンソは仕事のためなら簡単に法を犯す独特のやり方を押し通す。
正義感に燃えるジェイクはとまどい、やがて警察機構の裏部分も見せられ苦悩する。
本作で2001年のアカデミー主演男優賞を受賞したデンゼル・ワシントン主演作品。
ワシントンが今までにないキャラクターで悪漢を好演。
今までいい者の役ばかりやってきたので、観る者がどうしても「こう見えても本当はいい奴なのでは」
と思ってしまう。今までとは180度違った役柄。
新人刑事役のイーサン・ホークも正義感は強いが繊細な青年をうまく表現した。
しかし一番の魅力はなんと言ってもウジャウジャ出てくる悪人たち。
特にスパニッシュ系のチンピラ達は実にリアルで、よくもまぁこれだけ悪そうな役者を
見つけてきたものだと思う。
カメラもうまいし、見応えのある作品だった。


「スナイパー」 カナダ・ドイツ映画
5月11日 DVD

銃器メーカーの社長夫人リバティーの携帯に男からお前をライフルで狙っていると
電話が入る。
言われるまま自らホットドッグの屋台に手錠で足を繋いだリバティーだが、
実は屋台には爆弾が仕掛けられていた。
携帯が切れると爆弾が爆発する仕掛けになっているという。携帯バッテリーの猶予は80分。
電話の主はジョー。元CIAの工作員で、学校での銃乱射事件で娘を亡くし、
復讐と銃社会反対を世間に訴えるための犯行だったが、やがてSWATも出動する事態となった。
ウェズリー・スナイプス主演2002年作品。
スナイプスの出演場面がほとんど狙撃のための部屋の中しかないし、電話のやり取りしてる
リバティーもほとんど屋台の所しかない。
つまり2カ所を交互に映してるだけで画面の変化が乏しい。
まるで密室劇。スナイプスの撮影拘束日数は3日ほどではないだろうか。
本当にそれぐらいで撮れてしまうほど。
銃に反対して銃を使うという理屈も共感できないし。
ラストがいただけない。こんな幕切れと知ってたらこんな映画観なかったやろうと思うほど
お粗末なラストだった。


「春の惑い」 中国映画
5月9日15:30 東映試写室(角川大映映画)

1948年、中国蘇州。没落した名家に嫁いだユイウェンは長患いの夫リーイェンと
義妹シュウと召使いの4人暮らし。
そこに夫の医大時代の友人チーチェンがやってきた。
ユイウェンはチーチェンの姿を見てひどく驚いた。チーチェンはユイウェンの初恋の人だったのだ。
旧友との再会を喜ぶ夫とは裏腹にユイウェンの心は激しく動揺する。
鬱病で心を閉ざす夫を献身的に看病するユイウェンであるが二人の心は離れていく。
都会的なチーチェンに妹のシュウは熱を上げるが、ユイウェンの心では封印していた恋心が静かに
燃えだしていた。
登場人物を4人に絞り込んで心の動きを静かに追っていくが、昔のメロドラマみたい。
夫がそれほど病人にも見えず、妙に物わかりがよくて優しい。
妻のユイウェンはきれいだけど、いつもチャイナドレスでしゃなりしゃなりと歩いている。
友人のチーチェンは友人思いだけどさわやかすぎるし、妹は屈託がない。
昔の映画のリメイクらしいけど、芝居が古くさい。舞台芝居を見ているよう。
もっと現代的にアレンジしないとリメイクの意味がない。


「ギャングスター・ナンバー1」 イギリス映画
5月8日13:00 ソニー試写室(ギャガ・コミュニケーションズGシネマグループ)

現代のロンドン。ホテルでのボクシング・マッチの特等席には、一分の隙もないタキシード姿に
高級葉巻をくゆらすギャングスターの姿があった。
1968年ロンドン。ちんぴらの若きギャングスターは当時街を支配していたメイズに見込まれ、
手下となる。
メイズは高級スーツに身を包み、男っぷり・ライフスタイルなどギャングスターの憧れの存在だった。
腕と度胸でメイズに可愛がられるギャングスターだが、カレンという女性の登場でギャングスター
とメイズのバランスが崩れる。
メイズとカレンの仲に嫉妬したギャングスターは、メイズと対立するボス両方を追い落とす
策略を実行する。
その後30年間ロンドンを牛耳ってきたギャングスターだが、フレディが30年ぶりに出所してくると聞き
言いしれぬ不安に襲われる。
「時計じかけのオレンジ」のマルコム・マクダウェルが老獪なギャングのボスを好演。
長きにわたって君臨する者の自信と風格、獣のようなすごみ、ダンディーさ。
これらを表現できる役者はたくさんいるだろうけど、やくざの下卑た部分もちゃんと出せる
マクダウェルはハマリ役。
若きギャングスター役のポール・ベタニーもクールさと狂気をうまく表現した。
暴力シーンは、やられる側の目線で延々撮られている。痛みで気を失いそうになり、また目が覚める。
その繰り返しで、ハッキリ見せないが凄惨さが増した。今までになかった撮り方。
ベタなタイトルで損してるかも。


「エルミタージュ幻想」 ロシア・ドイツ・日本映画
5月7日13:30 ソニー試写室(パンドラ)

ロシア、かつて宮殿だったエルミタージュ美術館で、現代の「私」(監督自身)と、
19世紀のフランス人外交官キュスティーヌが、エルミタージュ宮殿を気ままに散策するが、
部屋ごとに時代が異なり、歴史的な一面を二人で垣間見る。
サンクトペテルスブルグにある世界最大級のエルミタージュ美術館で撮影された歴史絵巻。
今は美術館になっているが、撮影に許された日数はたった1日。
そこで90分ワンカットで撮影するという前代未聞のロケとなった。
つまり撮影をスタートしたらラストまで、90分間まったく失敗は許されない。
広大な美術館のいたる所にスタッフ・役者を配置し、一発撮りする。
当然別の場所で綿密なリハーサルはしてるだろうけど、すごい離れ業。
フィルムは最長12分しかもたない。ビデオも45分まで。
そこで撮影はビデオカメラだけど記録媒体はハードディスク。
カメラマンは身体に付けたステディカム(「シャイニング」の迷路などで使われた手
持ちでもブレないカメラ)で延々90分撮影する。
すごい試みだけど内容はとても退屈。
何度も睡魔に襲われて、夢か映画かわからず、本当に「エルミタージュ幻想」になってしまった。
しかし、最後の舞踏会のシーンはすごかった。
特に舞踏会が終わって参列者がぞろぞろ帰路につくシーンは、正装した大量の男女がホールを出て
階段を下りるあたりが圧巻。
それらしい壮年のエキストラがいい雰囲気を醸しだし、おびただしい衣装もいっさい手抜きなし。
内装は当然本物の迫力。
この最後のシーンだけは本当に当時の舞踏会に迷い込んだと錯覚するぐらいの圧倒的なリアリズムがあった。
最後のシーンを見るだけの映画。
この広大なエルミタージュ美術館は一度行ってみたい。


「略奪者」 フランス映画
5月6日13:00 ヘラルド試写室(角川大映映画)

モロッコ。航空管制官のノアは空港に着く砂金強奪のためヒットマンのシモン、
ドライバーのハーヴェイと助手のヴィクターを雇う。
計画はまんまと成功し、砂金受け渡しの海岸まで追っ手をかわしながらトラックで
砂漠を激走するが、シモンとハーヴェイはそりが合わず、信用できるのは自分だけと衝突を繰り返す。
警察の追撃、故障、裏切り、地雷原など過酷な逃避行の中、それぞれの疑心暗鬼は膨らんでいく。
CF出身のルイ=パスカル・クーヴレール初監督作品。
この作品、いろんな映画を思い出させる。
砂金強奪シーンはタイトルバックでさらっと見せるだけでいきなりトラックでの逃避行から始まる。
このあたり「レザボア・ドッグス」。
載せ替えたタンクローリーでの走行シーンは「激突」。後へは退けない男達の激走は「恐怖の報酬」。
CF出身らしく随所にクローズアップや望遠レンズを多用し、絵作りにこだわる。
みんなキレた奴らばかりで、こんなメンバーでははじめからうまい事いかないのはわかってたはず。
しかし、次から次にいろんなパターンの障害を用意し、立場も二転三転する。
空(空港)〜陸(砂漠)〜海(目的地)と陸海空を股にかけてノンストップで話は進む。
おまけに最後の海は機雷まである。
なーんにも考えんと荒くれ男と砂漠の疾走感に身を任せて見るのがこの映画の見方か。


「トータル・フィアーズ」 アメリカ映画
5月5日 DVD

ロシア大統領が急死し新大統領に就いたのは無名のネメロフだった。
チェチェンに軍事介入するネメロフに詳しいCIA分析官ジャック・ライアンは
キャボット長官の助手として働く事になった。
一方、中東戦争時に撃墜された戦闘機から核爆弾が回収され、テロリストの手に渡っていた。
彼らの目標は大統領も観戦するスーパーボウルのスタジアム。
ライアンの連絡で間一髪脱出した大統領だが、数万人を飲み込んだスタジアムで核爆発が起こり、
米国はロシアの仕業と報復攻撃の準備を進め、全面核戦争へのカウントダウンが始まった。
トム・クランシー原作のジャック・ライアンシリーズ第4弾。
ライアン役はハリソン・フォードからベン・アフレックに変わった。
物語は緊張感を持続させながら進み、真ん中の山場、核爆発シーンへ。
爆発の瞬間を見せず、避難する大統領専用車や病院の窓にいきなり衝撃波が来る演出は
静かだけど恐怖感を倍増させた。
米大統領がちょっとキレやすいところがあるが、長官役のモーガン・フリーマンが
画面を引き締める。
ロシア〜アメリカ、ワシントン〜ボルチモアなどヒョイヒョイと移動しているように見え、
距離感がない。
ちょっと都合よく展開するところもあるが、そこは娯楽作品と割り切って見る映画だろう。
「フィールド・オブ・ドリームス」「スニーカーズ」のフィル・アルデン・ロビンソン監督
2002年作品。


「バイオハザード」 ドイツ・イギリス・アメリカ映画
5月4日 DVD

巨大企業アンブレラ社は、地下の巨大研究所で細菌兵器の開発をしていたが、
何者かによってウィルスは奪われ、研究所内にウイルスを散布されてしまった。
メインコンピューターは感染を防ぐため施設を完全封鎖した。
原因究明のためにアンブレラ社が派遣した特殊部隊は、研究所の出入り口で倒れていた
アリスを見つける。
アリスは神経ガスの影響で記憶をなくし自分が誰なのかもわからない。
特殊部隊はアリスを連れて施設内に入っていくが、そこにはウィルスに感染し
ゾンビと化した人間達が彼らを待ちかまえていた。
人気ゲームを映画化した、「モータル・コンバット」「イベント・ホライゾン」の
ポール・アンダーソン監督2002年作品。
よくあるゾンビ物なんやけど、いろんな映画のええとこ取りして退屈させないようにしてる。
「2001年宇宙の旅」、「エイリアン3」、「キューブ」のトラップなど。
鍵を握る二人が神経ガスの影響で一時記憶喪失になってると言う設定が、物語をふくらませた。
なかなかいいアイデア。
主演のミラ・ジョヴォヴィッチのヌードなどサービスカットもあるし、ディナーのために
ドレス姿だったのでそのままパンチラで戦う、お色気シーン満載。
ラストは続編を匂わせて終わっている。
続編が出来ても、もうミラは出ないやろうし、内容もきっとしょぼくなっていくねやろうなぁ。


「タイムマシン」 アメリカ映画
5月3日 DVD

1890年、大学で物理学を教えるアレクサンダーは、暴漢に恋人エマを殺される。
失意のうちに4年の歳月が過ぎ、エマを救いたい一心で研究に没頭したアレクサンダーは
ついにタイムマシンを発明する。
エマが襲われる前に戻り、暴漢のひそむ公園を回避したが、馬車の事故でやはりエマは死んでしまう。
エマの運命を変えるヒントを探しに今度は未来に向かうが、未来では月が爆発し地球は危機に瀕していた。
原作者のH・G・ウェルズの曾孫サイモン・ウェルズ監督2002年作品。
タイムマシンのメカはファンタジーぽくっていいし、CGもそこそこよくできているが、
後半は別物の映画になってしまって、「なんじゃこりゃ」という感じ。
80万年先など行き過ぎ。
CGのクォリティーの割に地底人の特殊メイクが驚くほどちゃち。
後半からはエマそっちのけ。
誰が見ても後半の展開は認めんやろ。
主演は「メメント」のガイ・ピアース。


「惑星ソラリス」 ソ連映画
5月2日 ビデオ

惑星ソラリス軌道上の宇宙ステーションで異変が起きていた。
調査のため科学者クリスはステーションに派遣される。
荒れ果てたステーションには3人の科学者がいたが、一人は自殺していた。
ステーションでクリスが見たものは10年前に死んだ妻のハリーだった。
ソラリスの海は人間の心の奥底にある物を反映し具現化させるのだった。
幻ではなく、生きているとしか思えない実態としての妻を前に、クリスは
悩むのだった。
1972年、旧ソ連アンドレイ・タルコフスキー監督作品。
全体に間延びした映像。
ステーションに行くまでがダラダラ長く、実家を後にして高速道路
(何故か東京の首都高)を走っているシーンもしつこいぐらい長い。
亡き妻が出てきてからも長い。
もっとテキパキ繋げば2時間45分もかからんかったやろうに。
ラストの映像が美しいと聞いていたが、それほどでもなく、ひどく退屈な映画。
キャメロン製作、ジョージ・クルーニー主演でリメイクしてるけど
おもしろく変えられるねやろか。心配。


「アイズ・ワイド・シャット」 アメリカ映画
5月1日 ビデオ(WOWOWにて収録)

ニューヨークの高級アパートに住むハフォードは医者として成功し、
美しい妻アリスと娘が待つ幸せな家庭、患者達は金持ちばかり。
なに不自由無い幸せな生活だったが、ある日ハフォードがパーティーで浮気したと思いこんだ
アリスは、以前ホテルのロビーですれ違った海軍将校に心を奪われ、
すべてを捧げてもいいと思ったと告白する。
その日からハフォードは、妻がその男に抱かれている妄想にとりつかれ、
偶然知った乱交パーティーに潜り込む。
1999年、スタンリー・キューブリック監督の遺作となった作品。
トム・クルーズ、ニコール・キッドマンのきわどい性描写があるのかと思っていたら
それほどでもなく、他の性描写も実にドライに描かれていてR指定する意味がないほど。
お話も、見終わって「たったこれでけ?」と思えるような内容。
これだけの話をこんなに時間かけて見せてたのかと、少しがっかり。
しかし、照明や画面の作り方は紛う方無きキューブリック作品だった。
改めてスタイルをもった監督だったと思う。


「ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔」 アメリカ・ニュージーランド映画
5月1日15:40 梅田ピカデリー

計り知れない力を持つ指輪を滅びの山に捨てるためにフロドと旅する一行の冒険物語第2弾。
前作最後で一行が3班に分かれてしまったので物語が拡散してしまった。
主人公フロドの出番が少なかったが、ゴラムという見にくい妖怪のキャラクターが魅力的で
フロド班は何とか沈まずにすんだ。
ゴラムのCGはよくできてるし、二重人格的なキャラクターもストーリーに厚みをもたらして
今後の展開に重要な役として絡んでくる事は必至。
他のCGのクォリティーもかなりのものだけど、木の精が案外短気。
何百年も生きて、仙人のようなキャラクターなのに、あんなにすぐ激昂するとは・・・。
ダムが決壊して大量の水が流れ込んでくるシーンで木の精達が流されないのはおかしい。
根を地面に張ってしがみつくようなカットを1カ所入れればすむ事やのに。
原作を具現化するのにかなりの想像力を使っているようで、そこまで頭が回らんのかも知れない。


「マルホランド・ドライブ」 アメリカ映画
4月27日 ビデオ(WOWOWにて収録)

ロスの山あいを走る道で交通事故のため記憶をなくしたリタと名乗る女が、
女優になるためロスにやってきたばかりのベティの家に転がり込む。
ベティはリタの記憶を取り戻すため、リタと共にロスの街を手がかりを求めて
奔走する。
2001年デビッド・リンチ監督作品。
リタの過去探しに平行して、得体の知れない男から主演女優を無理矢理押しつけられた映画監督、
レストランで夢の話をする男、ドジな殺し屋などが物語に絡んでくる。
これらが最後は一本の糸に繋がると思って辛抱強く見ていたが、どんどん訳のわからない
世界に向かってまっしぐら。
見終わって自分なりに話を整理しようと何度も試みたが徒労に終わった。
わけわからん。
シュールな映画を撮りたいなら、はじめから物語をそれらしく進めてくれたらいいのに
なまじ途中までストーリーがちゃんとしてるのでまともなお話だと思って観ていた。
途中から舞台や人物が複雑にスクランブルされて観ている者が混乱するだけ。
2時間半辛抱してこんな映画を見せられたらストレスが溜まる。
デビッド・リンチはいったい何を考えているのか。
ナオミ・ワッツ主演。


「ペイ・フォワード 可能の王国」 アメリカ映画
4月27日 ビデオ(WOWOWにて収録)

両親が離婚したため母子家庭のトレバー少年は、社会の課題でシモネット先生から
「世の中を変えるためにはどうしたらいい?」と言う課題を与えられる。
トレバーのアイデアは「一人の人間が3人に善行を施す。その人達がまた3人に・・・」
という連鎖的善行運動だった。
トレバーは手始めにホームレスの男を家に招き入れ、食事と寝床を提供するが、
やがてトレバーのアイデアは大きな広がりとなり、マスコミが動き出す。
2000年製作、「ディープ・インパクト」のミミ・レダー監督作品。
善行の施し方に無理がある。車が大破した人を見つけたからと言って、
自分のジャガーをポンとくれてやったりするのはやり過ぎ。
善行の連鎖に説得力がない。
物語はトレバー少年の寂しさ、アルコール依存症と戦う母、幼い頃に心と体に傷を負い、
立ち直れないシモネット先生、母とシモネット先生の恋の行方など3人を中心に描かれているが、
ハーレイ・ジョエル・オスメント、ケヴィン・スペイシー、ヘレン・ハントらの
演技があったから見てられたような映画。
ラストは無理に泣かせて印象付けようとした。いただけない。
ミミ・レダーは好きな監督やねんけどなぁ。残念。


「ブルークラッシュ」 アメリカ映画
4月25日13:00 ヘラルド試写室(ギャガ・コミュニケーションズ、Gシネマグループ)

ハワイのオワフ島に住むアンは友達のエデン、レナ、そして反抗期の妹ペニーと4人暮らし。
ホテルでメイドとして働き、毎日サーフィンに明け暮れる毎日。
アンの夢は世界一危険なサーフィン大会、パイプ・ライン・マスターズで優勝する事。
でもアンはサーフィン中の事故が原因で思い切ったライディングが出来なくなっていた。
ある日アンはホテルでフットボールのスタープレイヤーマットと出逢い、二人は恋に落ち
大会前なのに練習もさぼりがち。
親友のエデンはそんなアンを波の恐怖心から逃げてるだけ、大会でベストを尽くせと叱咤激励する。
大会当日、このままでは自分たちを捨てて男と家出した母親のようになってしまう、
もう一度自分の夢に向かい合おうと、巨大な壁のようにそびえ立つ凶暴な波に
アンは立ち向かっていくのだった。
CGや合成をいっさい使わず実際に撮影したサーフィンシーンは迫力満点。
主役のケイト・ボスワースはこのためにサーフィンの特訓を受けたらしいが、
ちゃんと顔大写しで波に乗っている。(まぁ引きの絵は吹き替えやろうけど)
サーファーの視線で撮影されているので臨場感があるし、波の上よりも
巨大パイプ・ラインの後の海中の渦巻きをよくとらえているので、
外から見えない海中の恐怖もよく出ている。
物語はスポーツ物のセオリー通り恋と友情をちゃんと絡めたベタなものだけど、
最近サーフTシャツのCMなんかも流れてるし、この夏はファッション的にも
サーフィンブームになり、その「波」にうまく乗ってこの映画ブレイクするかも。


「二重スパイ」 韓国映画
4月24日19:00 完成披露試写、梅田ブルク7(ギャガ・ヒューマックス、東映)

1980年東ベルリンから追っ手を振り切って韓国に亡命したビョンホは、
実は北朝鮮が送り込んだ二重スパイだった。
偽装亡命の疑いをかけられたビョンホは厳しい拷問を耐え抜き、国家安全企画部の
スンチョルに身柄を預けられる。
やがて信頼を得だしたビョンホは、安企部で北朝鮮アナリストとしてのポストを得る。
スリーパーとして活動しているDJのスミと、恋人を装って接触していたビョンホだが、
敵地での孤独さから二人の心は急接近していく。
スミの父親代わりのスパイが捕まり、口封じのため暗殺指令が出されたが、
スミはビョンホに伝えず、本国はビョンホが寝返ったのではと疑念を抱く。
そのころ安企部でもビョンホを怪しむ動きが出て、ビョンホは北と南
両方から追われる立場になってしまった。
「シュリ」「カル」のハン・ソッキュ主演作品。
二人に愛が芽生えた事で北と南双方から追われると言う話の展開はいいが、
亡命したとはいえ、北朝鮮出身者を国家安全企画部の機密書類のそばで働かせている事に
まず不自然さを感じる。
安企部の上司がビョンホに薦めた縁談の相手が、北のスパイのスミだったなどという偶然もでき過ぎ。
二人が逃げた先がブラジルの小さな漁村というのも身を隠すのには不自然。
ブラジルの田舎では急に現れたアジア人の方が目立つやろうに。


「X−MEN2 進化の始まり」 アメリカ映画
4月21日19:30 完成披露試写、ナビオTOHOプレックス(20世紀FOX)

ホワイトハウス内で大統領がミュータントに襲撃され、ストライカーはミュータント狩りを
大統領に進言。
特殊部隊を率いてミュータント教育をしているエグザビア・スクールを急襲するが、
ウルヴァリン達は何とか脱出に成功する。
ミュータントと人間の共存を目指すプロフェッサーXは、収監中でミュータントによる支配をもくろむ
マグニートのもとを訪れるが、何者かによって拉致され、マグニートも脱獄する。
ミュータントをせん滅しようとするストライカー、ミュータントによる支配を企むマグニート、
そして平和共存を目指すX−MEN達との三つ巴の戦いとなったのだった。
ヒュー・ジャックマン、ハル・ベリー、パトリック・スチュワート、ファムケ・ヤンセンら
前作のメンバーが再結集した続編。
新手のミュータント達が加わってパワーアップ。
冒頭の大統領が襲われるシーンは、よく警備陣がぼんくらだったりするけど、
この映画の警備陣はキビキビして大統領警護のフォーメーションもちゃんとしてる。
だからよけい襲うミュータントの凄さが際だつ。がっちりつかんだ。
手から刃が飛び出すウルヴァリンと同じ能力のミュータントが敵として登場し、
ウルヴァリンとの一騎打ちとなるが殺陣がよく出来てるので見せる。
「スター・ウォーズ」「マトリックス」でもそうだが、レーザーやガンの撃ち合いだけではなく、
クライマックスは刀やカンフーのアナログ的な戦いの方が盛り上がる。
その辺のセオリーをっきちりおさえてる。
前作同様「ユージュアル・サスペクツ」のブライアン・シンガー監督の演出が冴えている。


「キャッツ&ドッグス」 アメリカ映画
4月20日20:00 WOWOW

有史以来、世界征服を狙う猫族と人間との共存を目指す犬族の間では、熾烈な戦いが
「人」知れず繰り広げられていた。
犬アレルギーを防ぐ新薬を研究中のブロディー教授の愛犬が猫族に誘拐され、
犬族は替わりに優秀なエージェント犬を派遣しようとしたが間違って、
素人のビーグル犬のルーがブロディー家にやってきてしまった。
仕方なく犬族諜報部は、教授の研究を成功に導くようエージェントを派遣し、
ルーをサポートする事にしたが、猫族も研究を阻止するため刺客達をブロディー家に
送り込んできた。
アニマトロニクスとCGをふんだんに使った犬猫映画。
犬猫がしゃべる口元はすべてCG処理されている。
どちらかと言えば犬好き用の映画で、猫は悪者に描かれている。
犬は本物を多用しているが、猫は調教が難しいのか、ほとんどがCGとアニマトロニクスで
描かれている。
技術的には何ら新しい所もない映画だけど、犬猫らしいギャグが随所にあって所々で笑わせる。


「ニューヨーク 最後の日々」 アメリカ映画
4月16日15:30 東宝試写室(アートポート)

初老のイーライはニューヨークで長年パブリストとして第一線で活躍していた。
その仕事はパーティー・イベントの企画・PRなどが主な仕事だが、
顧客のスキャンダル処理まで請け負い心身共に披露し薬漬けの毎日。
今は難民救済イベントに全力を傾けているが、元俳優で政界進出を狙う長年の顧客ケアリー
から、暴力事件で警察に捕まったケアリーの愛人で女優のジリーを保釈させ飛行機に乗せるよう
依頼される。
奔放なジリーはイーライを阿片窟のような秘密クラブに連れて行き、イーライは阿片の影響でジリーの部屋で
眠ってしまった。
朝、フラフラの頭で自宅に戻ったイーライだが、ジリーは何者かによって殺されていた事を知る。
最後の自分の良心的な仕事として、難民救済パーティーに並々ならぬ情熱を傾けるイーライは、
今までのキャリアを駆使して政界・財界の大物を口説き落とし何とかパーティーを成功させようと躍起になるが、
大きな陰謀が動き出していた。
ロバート・レッドフォード製作、アル・パチーノ主演作品。
本来裏方のはずのパブリストという仕事が、芸能番組で名前が出たり、この主人公はかなり有名人のよう。
久しぶりにライアン・オニールの姿を見たが、政界進出を狙う元俳優という今回の役どころはピッタリ。
まさにハマリ役。
パチーノは相変わらずの演技だけど、あんなに髪の毛をボサボサにして、だらしない服装にしなくても
焦燥感は出せたはず。
ラストは「カリートの道」みたい。
女優陣はキム・ベイシンガー、「ディープ・インパクト」のティア・レオーニ。


「8 Mile」 アメリカ映画
4月15日15:30 UIP試写室(UIP)

1995年デトロイト。週末の夜にクラブ「シェルター」ではラップ・バトルが開催される。
ラビットは白人だけど仲間の薦めでこのバトルに参加するが、力を発揮できずに敗退する。
ラビットはラップグループ「313」(デトロイトの市外局番)のメンバーで、仲間からの
信頼も厚い。
トレーラー・ハウスで母と妹との貧しい暮らし、ライバルグループとの対立、
安い賃金、若い男にすがるしか生きるすべのない母親。
この環境から抜け出すにはラップでメジャーになる事しかない。
出口の見えない混沌の中でラビットは苦悩する。
ラップ界のスター、エミネム初主演映画で監督は「L.A.コンフィデンシャル」の
カーティス・ハンソン。
ラップバトルがおもしろくない。翻訳もあるだろうけど歌詞の内容が低俗で、
なぜ観客があれほど熱狂するのか、観てる者に伝わってこないので物語に入っていけない。
途中で出会う彼女もいかにもイケイケで、はじめから長続きしそうにない。
くだらない歌詞で喜ぶ黒人達、アホみたいに単純なプレス工場での作業、
喧嘩で銃を出したはいいけど自分の足を撃ち抜いてしまう仲間など、
この映画は賢そうな人間が全然出てこない。
本当にこの「8号線」で仕切られた地域はクソ溜みたいなエリアである事だけは
よく伝わった。
共演はキム・ベイシンガー。


「ザ・コア」 アメリカ映画
4月14日19:30 完成披露試写、ナビオTOHOプレックス(ギャガ・ヒューマックス)

ある日突然、心臓のペースメーカーが止まり、同時に多数の突然死が起こり、
広場の鳩が急に方向を見失い激突死したり、不可解な出来事が頻発した。
シカゴ大学地球物理学教授のジョシュ・キーズは、常に回転している地球の核(コア)が
停止していて、このままでは1年以内にすべての生物が死滅すると、地球物理学の大家
ジムスキー博士に進言する。
地球を救うには地底深く核まで潜り、核爆弾の巨大な爆発力でコアを再び回転させるしか方法がない。
その道のエキスパート達が集められ、特殊探査艇で前人未踏の地球の核に向けて出発するのだった。
「エントラップメント」のジョン・アミエル監督作品。
地底版「アルマゲドン」と言ったところ。
つかみはスペースシャトルでのロス市街不時着シーン。冒頭は空でハラハラさせ、
後半は地底でドキドキさせる作戦。
高温でドロドロのマグマの中を通るので、今までのSF物のように探査艇のフロントにガラスを
はめ込むわけにいかず、かといって潜水艦のように前が見えないのも盛り上がりに欠ける。
そこで超音波での画像を前方ディスプレイに映し出すという方法をとっているが、緊迫感は今ひとつ。
各部屋が電車のように連結されたミミズ型の探査艇は、損傷を受けると切り離せるという設定だけど、
一番後ろが損傷を受ければいいけれど、いきなり2両目に損傷を受けたらどうするつもりなのだろう。
まぁ、うまい事後ろからダメージを受けるねんけど・・・。
宇宙・深海・体内といろんな世界を舞台にしてきたSF映画で、まだ手つかずだったのが地球内部だった。
着眼点はいいけど、科学的な理屈に少し無理があるように思えた。
俳優陣も顔は見た事あるけど名前だけ言っても、わかってもらえないような俳優ばかり。
誰か一人ぐらい看板役者を入れててもよかったのになぁ。


「北京ヴァイオリン」 中国映画
4月11日15:30 東宝東和試写室(シネカノン)

中国の田舎町で暮らす13歳のチュンは父リウと二人暮らし。
チュンは2歳の時に亡くなった母の形見のヴァイオリンに卓越した才能を発揮し、
リウは何とかチュンの才能を伸ばしてやりたいと二人して北京に引っ越す。
コンクールで見つけたチアン先生に何とか息子のレッスンを頼み、
リウはせっせと慣れない都会で働いてレッスン代を稼いだ。
チュンは近所に住むきれいなお姉さん、リリに亡き母の面影を追うが、
リリは数人の金持ちの囲われ者で派手な生活をしていた。
変人チアン先生ではこれ以上チュンの才能が伸びないと見て取ったリウは、
高名なバイオリニストを育てたユイ教授のもとを訪ね、
チュンの出生の秘密を話して弟子入りを許してもらうのだった。
「さらば、わが愛/覇王別姫」「キリング・ミー・ソフトリー」のチェン・カイコー
監督作品。
主役のチュン少年役を選ぶとき、芝居は出来るがバイオリンが嘘くさい役者を選ぶか、
バイオリンはうまいが芝居は出来ない少年を選ぶか二つの選択肢があったが、
カイコー監督は後者を選んだ。
バイオリンはピアノと違って楽器が顔のそばにある。
だからカットを割って顔のアップにしても、演奏してる手が映ってしまうので、嘘くさいのは興ざめになる。
それで実際バイオリニストを目指しているタン・ユンを起用したよう。
芝居があまり出来ないので寡黙な少年として口数を少なくしているが、この少年「泣き」はうまい。
試写室ですすり泣きが起こる事はよくある事やけど、今回はすごかった。
隣の女の人は途中でカバンからハンカチを出して涙をぬぐっていたが、
最後の方は顔を覆って泣いていた。もう号泣状態。
「きれいなお母さん」もそうだったが、子供に対する愛情の深さで泣かせる。
不幸で泣かせるアメリカ映画とは違う。
「the EYE [アイ]」のように同じアジア人の作る映画は日本人の心のひだの奥に
響く。
「ピアニスト」の次は「ヴァイオリン」か。


「the EYE [アイ]」 香港・タイ映画
4月9日15:30 東映試写室(クロックワークス)

2歳の時に失明したマンは角膜手術を受け徐々に視力を取り戻していく。
マンにとってこの世界は初めて見る世界だが、不可思議なものが見えてくる。
入院中、隣のベッドの老人が黒い影に連れられて部屋を出て行く。
アパートの廊下で「僕の通信簿見なかった?」と何度も尋ねる少年。
防犯カメラに映らないエレベーター内の老人・・・。
やがてそれらが自分にしか見えない存在だと気づき、心理療法士のワと
角膜の提供者を探す旅に出る。
「シックス・センス」を「リング」タッチで描いている。
設定がいい。
生まれてからずっと闇の世界にいた女性が初めて世界を見る。
今まで物の認識は触ることでしかできなかったので、物を見てもそれとわからない。
だから異様な物が見えても初めはそれが普通なのか異常なのかもわからない。
手術直後はぼんやりとしか見えないがそれが観客には恐怖心を増す。
見えるなら見える、見えないなら見えないという風にしてもらわないとよけい怖い。
同じアジア人の作る映画は欧米人のそれとは違って日本人の恐怖の琴線にビリビリ触れる。
「レイン」のオキサイド&ダニー・パン兄弟、監督作品。


「メイド・イン・マンハッタン」 アメリカ映画
4月9日10:15 UIP試写室(UIP)

マンハッタンの一流ホテルのメイドとして働くマリサは、一人息子のタイをブロンクスで育てる
シングルマザー。
別れた夫が週末に急にタイに会いに来られなくなったからと、仕方なく週末はホテルで過ごさせる事にした。
エレベーターで遊説中の上院議員候補クリスと仲良くなったタイは、クリスと犬の散歩に行く事にした。
マリサに散歩の事を告げるため、マリサが仕事するスイートルームに行くと、マリサは同僚にノセられ、
宿泊客の素敵なスーツを勝手に試着しているときだった。
目と目が合った途端に惹かれ会うマリサとクリス。
同僚の機転でマリサはこの部屋に宿泊するキャロラインと言う事になってしまった。
マリサを上流階級の女性と勘違いした上院議員候補クリスとメイドの恋の行くえは・・・・。
ジェニファー・ロペス、レイフ・ファインズ主演のラブ・コメディー。
ようは「プリティー・ウーマン」なんやけど、
ジュリア・ロバーツ、リチャード・ギアは思えば日本人にはバタ臭い顔やった。
しかしファインズはあっさり顔やし、ロペスはラテン系で浅黒い肌だから日本人にははこの二人しっくり来る。
ジュリア・ロバーツでは「こんな派手なメイドはおらんやろ」と思われてしまうが、
ラテン系のロペスはメイドのスタイルもよく似合う。
ロペスはドレスアップした衣装もgood。
最後は「愛と青春の旅立ち」みたい。
ヒットした恋愛映画のいいとこ取りみたいな映画やけど、やっぱりまんまとハマってしまう。


「トレジャー・プラネット」 アメリカ映画
4月8日19:20 完成披露試写、梅田ピカデリー(ブエナビスタ)

惑星モントレッサに住むジムは15歳。
幼い頃父親が家族を捨て旅立ってからは母親が食堂を切り盛りしながら女手一つで
ジムを育ててきたが、ジムはトラブルばかり起こし、いつも母に苦労をかけてきた。
ある日近所に不時着した宇宙船から瀕死の男を救ったが、いまわの際に不思議な金属球を
ジムに渡してこと切れた。
その金属球には伝説の海賊フリント船長が隠したとされる莫大な財宝の在りかを示す
座標が隠されていたのだ。
知り合いの物理学者ドップラー博士も宝探しにのり、宇宙船と乗組員を手配してくれた。
ジムも下働きとして船に乗り込んだが、仕事は雑用ばかり。
サイボーグの料理長シルバーにしごかれながらも飲み込みの早いジムに、シルバーは見所のある奴と
ジムを息子のように思いだしたが、船では陰謀が静かに進行していたのだった。
冒険小説「宝島」を宇宙に置き換えたディズニーのアニメ映画。
宇宙船がまんま帆船で、帆でソーラーエネルギーを受けて進むという理屈はいいけど、
宇宙空間にいて宇宙服も着ず甲板で平気にしてるというのがわからない。
まぁ人間に似てるけど、どこかの惑星の宇宙人だから酸素が必要ないと言われればそれまでだけど、
その辺の説明が全くなく、コスチュームや宇宙船が昔のまんま。
無理矢理宇宙に置き換えただけのよう。
帆船が空を飛ぶという風景は「ピーターパン2」でもやってるので目新しさもない。
子供向けだから話がトントンと進み、悪人もそれほど悪くない。
まぁ夏休み公開なのでファミリー向けにはいいかも。
何でも姿を変えられる生物、モーフが可愛い。


「メラニーは行く!」 アメリカ映画
3月30日 エア・カナダ機内

ニューヨークに住むメラニーは新進気鋭のデザイナー。
ファッション・ショーは大成功、おまけにニューヨーク市長の息子からも求婚され順風満帆、
人生バラ色に見えたが、実は清算しなければならない過去があった。
故郷アラバマに別居中の亭主がいて、市長の息子と結婚するためには亭主と別れないといけない。
意を決して長年帰ってなかったアラバマに離婚届にサインをもらうために戻ったが、
亭主は頑としてサインを拒み、ダサい同級生達は馴れ馴れしく寄ってくる。
彼にはアラバマの令嬢と嘘をついていたが、市長差し金の秘書が新聞記者と偽って
アラバマに乗り込んできたからさあ大変。
何とか友人の邸宅を自分の家のように見せたが、結婚式はアラバマでする羽目になってしまった。
メラニーは無事過去を清算して玉の輿に乗れるのか。
リース・ウィザースプーン主演のロマンチック・コメディー。
とにかくこの主人公メラニーは自己中心的な嫌な奴だけど、ティファニー本店を貸しきりにして
どれでも好きな物をとプロポーズされればメラニーでなくても心は傾くところ。
故郷の同級生達にもひどい事を言ったりして、かなり観客から反感を買うキャラクターだが、
途中からなぜメラニーが家を飛び出したのか、本心は・・・と徐々にメラニーの心が解き明かされるにつれ
観客もメラニーを許すようになる。
ちゃんと救いが用意されている。わかりやすいお話だけどそのあたりに脚本のうまさを感じた。
南部の人間の東部に対する考え方、いまだに南北戦争を引きずってる南部気質など、
原題に「Sweet Home Alabama」とあるように、アラバマという土地柄が話に重要な要素となっている。
自己中だけど「幸せになった者勝ち」みたいな、現代女性に支持される新しい恋愛映画なのかもしれない。


「CUBE2」 アメリカ映画
3月20日15:30 東宝東和試写室(メディア・スーツ、クロックワークス)

心理療法医のケイトが目覚めると、そこは白い立方体のがらんとした部屋だった。
上下左右の中央に四角い扉が付いている。
そこを開けるとまた同じ部屋が・・・。
連続した同じような部屋をいくつか通るうちに、やはり分けもわからず閉じこめられた同じ境遇の
人達に出会う。
ゲームデザイナーマックス、技術者ジェリー、痴呆老人ベイリー夫人、私立探偵サイモン、
盲目の女学生サーシャらと協力しながら脱出の手がかりを探しながら部屋を進むうち、
囚われているメンバーが何らかの形で兵器メーカーアイゾン社に関係している事がわかってくるが、
部屋に仕掛けられた罠によって命を落としていく。
ところが別の部屋には死んだはずの人間が生きていたり、こちらにいる人間の死体が隣にあったりと、
重力や時間軸も違う世界だった。
5年前低予算ながらその発想のユニークさからヒットした「CUBE」の続編。
前作同様、訳もわからず連続した立方体に幽閉された人々を描いているが、今回は登場人物に関連性があり、
謎解きの要素が加わった。
今回は部屋に重力軸と時間軸が加わった4次元「ハイパー・キューブ」で、より複雑になっている。
罠もあるが、CGの出来は前作よりもいいものの前作の方がインパクトがあった。
「誰が・何故」という謎解きは今回一応明かされるが部屋の仕組みは難解。
最後まで謎を残していた前作の方が良かった。


「ブラッディ・マロリー」 フランス映画
3月20日13:30 東宝東和試写室(ギャガ・コミュニケーションズ、Kシネマグループ)

結婚式の夜、夫が吸血鬼とわかり斧で夫を殺害。ウェディングドレスを血に染めた女マロリー。
数年後彼女は超常現象特殊部隊のリーダーとして魔物達と戦っていた。
部隊のメンバーは爆発物の専門家でオカマのヴェナ・カヴァ。
口はきけないがテレパシーで会話し、超能力で他人を操る少女トーキング・ティナら。
誘拐されたローマ教皇救出のため悪魔崇拝教団アバドンの村に向かうが、
そこにはおぞましいゾンビや魔物達が待ちかまえていた。
日本の漫画オタクのジュリアン・マニア監督作品。
劇画ノリのチープなキワモノ映画やけど、監督の腕が悪すぎる。
冒頭の教会シーンもノリが悪いし、アクションもキレが悪い。
せっかくの各自キャラクターも薄ぺらくなってしまった。
魔物達も弱いし。
製作費がなくセットに金をかけられなかったのはわかるが、
「迷宮に迷い込んだ」と言って同じセットの周りを何度も違う方向から通る。
同じ安い製作費でも、他の才能ある若手監督に撮らせたら、同じ話でもっとましな映画を撮ったと思う。
主役のオリビア・ボナビーはセクシー・コスチュームに身を包んでいるが、
風貌はいかにもC級スターと言ったところ。


「愛してる、愛してない...」 フランス映画
3月19日13:30 東宝試写室(コムストック)

画学生のアンジェリクは医者のロイックと恋愛してるが、ロイックには奥さんがいて妊娠中。
でももうすぐ別れると言っているらしい。
イタリアに一緒に旅行する事になっていたが、空港で待ちぼうけ。
結局彼は来なかった。一途に彼を信じるアンジェリク。
妻は交通事故で流産して別居。
情緒不安定のロイックは患者に暴力を振るって訴えられる。
悪いのは彼ではなくあの患者の女・・・。
次の日医者を訴えた患者は殺されていた。
疑いは医者にかかるが・・・。
「アメリ」のオドレイ・トトゥ主演。
思っていた映画と全然違った。
チラシやプレスシートを見て、女の子が好きそうな可愛らしい恋愛映画だと思っていた。
オープニングもそうやし、恋するトトゥの屈託のない笑顔。
ところが物語が1/3まで進むと急にサスペンスになる。
そして物語が巻き戻されて、医者側から描かれると愕然とする事実が判明する。
プレスシートのストーリーには途中でここからは見終わるまで読むなとか、
この先は他言無用とか厳しい箝口令が敷かれてる。
事情が読めてからも二転三転仕掛けが用意されている。
「うーむ、やりおるわい」と言った感じの映画。アイデアの勝利。
でもスチール写真を見てると、本当にかわいらしい恋愛映画としかみんな思わんやろうなぁ。


「SF Short Films」 日本映画
3月18日20:30 心斎橋シネマ・ドゥ(2002年SF製作委員会)

バイト先をリストラされた主人公空子がタクシー運転手に転職する「Return」。
UFOをバイクで追い求めるヤンキーの弁天さんの恋愛話「県道スター」。
少女とおじさんの交流を描いた「ハナとオジサン」。
麻生久美子のイメージビデオ「アダージェット」。
リストラされた3人の中年男の友情をシティボーイズが演じる「仲良きことは良き事かな」。
田舎に帰った空子が友人との待ち合わせ場所に向かう途中、次々起こる田舎道での
小さな出来事「Slow is Beautiful」。
短い映画が6本。(公開時には増えるらしい)
3本ずつ1000円で公開するらしいけど、内容は6本あっても500円以下。
これやったら1時間物をちゃんと撮って1000円で公開した方が良かった。
ショート・フィルムと言いながら画像はビデオも多く、粗くて見にくい。
3本に主演してる麻生久美子は可愛いけど彼女のプロモーション映画のよう。
15分〜20分の作品だけど、どの作品も編集して何とかこの尺に収めましたというより、
プロモーション・ビデオのようにしてひっぱったような感じ。
WOWOWで放送すればいいような映画。
監督、中野裕之・ピエール滝・芹澤泰久他。出演、麻生久美子・シティボーイズ・ピエール滝他。


「ナショナル・セキュリティ」 アメリカ映画
3月13日15:30 ソニー試写室(ソニー)

ロス市警の警察官ハンクは倉庫泥棒の報を受け相棒と現場に急行するが、
銃撃戦になり相棒は殺されてしまう。
相棒を殺した犯人を自らの手で捕まえたいハンクだが、捜査チームに加えてもらえない。
パトロールの最中、警察学校を放校となったアールを車泥棒と勘違いして捕まえたため
暴力警官と訴えられ、服役する羽目になってしまった。
出所後警備員の職を見つけたハンクは、警察無線で倉庫泥棒の報を傍受、現場に向かうが
そこにはなんと自分を訴えたアールが同じ警備員として働いていた。
二人はいがみ合いながらも犯人を追うが、裏には大きな陰謀が隠されていたのだった。
「バッド・ボーイズ」のマーティン・ローレンス、「サンキュー・ボーイズ」のスティーブ・ザーン主演。
コメディーだけどカー・アクションがワン・パターン。
最後は必ず車が飛び上がってクラッシュ。
犯人が狙っているブツも、単純に宝石や金が隠されている物にした方が良かったのに、
訳のわからない金属では高価さがピンとこない。
マーティン・ローレンスも誰かとコンビを組んで事件を解決するという、同じ役ばかりでは飽きられてしまう。
この映画、わざわざ映画館に足を運んで見る映画ではないし、レンタルするまでもない。
吹き替えでもいいからテレビの洋画劇場で放送された時に、他にいい番組がないとき見るような映画。


「レセ・パセ 自由への通行許可証」 フランス映画
3月12日15:30 東映試写室(シネマパリジャン)

第2次大戦中、ドイツ占領下のパリ。娼館で大女優と密会するのは脚本家のオーランシュ。
彼はドイツ資本の映画会社コンチネンタルの誘いを頑として受け付けない。
一方、ブローニュの撮影所で助監督として働くジャン=ドヴェーヴルは
レジスタンスの活動家であったが、先輩活動家からコンチネンタル入りを勧められる。
フランス国内を自由に移動できる通行許可書「レセ・パセ」が手に入るし、
何よりいい映画が撮れそうな気がしてコンチネンタル入りを承諾する。
コンチネンタルで手腕を発揮するジャン=ドヴェーヴルだが、地下活動にも深入りしていく。
ベルトラン・タヴェルニエ監督作品。
2時間50分という長い映画だが、もっと短くできたと思う。
オーランシュとジャン=ドヴェーヴルと言う実在の映画人を扱っているが、
オーランシュがうまく物語に絡んでいない。
オーランシュはただ次々女を渡り歩いているだけのように見えて、ここだけ少し浮いている。
ジャン=ドヴェーヴルの映画作りの情熱とレジスタンス活動だけに焦点を当て、オーランシュは
少し絡むだけにした方がすっきりして見やすかったのに。
ただ、ドイツ資本ではあるけど、いい映画を作りたいという撮影所の人達の情熱はよく伝わった。
2002年ベルリン国際映画祭、銀熊賞受賞(主演男優賞・音楽賞)。


「ハッピー・フューネラル」 中国・アメリカ映画
3月12日13:00 ソニー試写室(ソニー)

世界的に有名な巨匠ドン・タイラー監督は「ラスト・エンペラー」のリメイクのため中国に来ていた。
この作品のメイキングを任されたルーシーはヨーヨーというカメラマンを雇う。
仕事はぴったりタイラーに張り付いて四六時中タイラーを撮影すること。
ヨーヨーは英語があまりしゃべれないが、タイラーはヨーヨーが気に入った様子。
撮影の合間訪れたお寺でヨーヨーは、中国では70歳を過ぎた老人が死ぬと大往生を祝う「喜葬」をすると
タイラーに教える。
「喜葬」を気に入ったタイラーは自分が死んだら「笑える葬式にしてくれ」とヨーヨーに遺言する。
撮影は紫禁城で多数のエキストラまで動員したクライマックスだが、タイラーはスランプに陥り
撮影はストップ。心労から倒れ意識不明となる。
ヨーヨーはタイラーの遺言通り「笑える葬式」を行うため、イベント・プロモーターのルイスに相談するが、
ルイスのとんでもないアイデアに乗せられ、タイラーの葬儀は世界中で放映される一大イベントとなっていった。
中国コメディー映画のヒット・メーカー、フォン・シャオガン監督作品。
タイラー役のドナルド・サザーランドがいい。
特に後半、好きな映画を撮るときの表情がとてもいい。ええ爺ちゃんになったなぁ。
物語は途中ちょっとやり過ぎかと思われるくだりもあるが、うまくすり抜けた。
ラストの仕掛けも小粋でいい。
ルーシー役のロザムンド・クワンはカズの嫁はんの設楽りさ子に似てる。


「アバウト・シュミット」 アメリカ映画
3月11日19:20 完成披露試写、OS劇場(ギャガ・ヒューマックス)

定年を迎えた会社員が妻に先立たれ、一人娘はさえない男と結婚すると言い出す。
家事もできず何をしていいかわからず無為な日々を過ごしていたが、
引退後に妻と二人で旅行にと、購入していたキャンピングカーに乗って旅に出る。
ジャック・ニコルソンがこの作品でアカデミー主演男優賞にノミネートされている。
ニコルソンはセリフも少なく、ほとんど表情だけで抑えめな演技。
抑えた分は身体からにじみ出て雰囲気となる。
ああ、こんなオーラのような演技もあるんやなと思った。
ヘアースタイルも柳生博のような1:9分け。
日本にもいるような無趣味な定年退職頑固親父を好演。
ラストの泣きの演技見るだけで映画代は回収したようなもん。
これでまたアカデミー賞獲るかもしれん。
キャシー・ベイツも良かったし、今度この二人で映画撮ってくれへんかなぁ。
「プレッジ」といい、この映画といい、最近のニコルソンは抑えが効いて円熟味を増してきた。


「スピリット」 アメリカ映画
3月11日10:15 UIP試写室(UIP)

西部開拓時代、野生馬のリーダー、スピリットは仲間のおとりとなって
人間に捕まり騎兵隊の砦に連れてこられる。
決して人を乗せようとせず、捕虜のインディアンと共に砦を逃げ出し、
インディアン部落で雌馬レインと出会い恋に落ちる。
しかしここでもけっして調教されることはなく、その不屈の意志に根負けしたインディアンは
彼を自由にする。
その時騎兵隊が部落を襲いスピリットはインディアンを助けるが、レインは撃たれて
激流に流される。
またしても騎兵隊に捕まったスピリットは鉄道建設の労役にかり出されるが、
故郷へ帰ることを決意する。
ドリームワークスのアニメ作品。
ディズニーアニメのように馬がしゃべったりすることはなく、
「ヒヒーン」とか「ブルブル」としか言わないが、表情と最小限のナレーション、
そして歌詞で心情を観客に伝える。
家族向けのアニメだから人間もそれほど悪人は登場しない。本当ならもっとひどい事しそうやけど・・・。
冒頭の映像はかなり緻密に描き込まれてて驚かされるが、そのクォリティーでは全編描かれていない。
CGアニメでもそうだが、端から端まで緻密に描き込みすぎると見る方が疲れるので
わざと背景はピントをぼかしたりする。
でも全編冒頭のような描き方をすると莫大な金がかかるのが本音だろう。
所々でウルウルさせるが、惜しむらくはインディアンも
英語ではなくインディアンの言葉でしゃべった方が良かったと思う。
ナレーションはマット・デイモン。


「ジェヴォーダンの獣」 フランス映画
3月8日 ビデオ(WOWOWにて収録)

18世紀のフランス。ジェヴォーダン地方で女子供だけが100人も次々惨殺される事件が起こる。
傷跡から得体の知れない巨大な獣の仕業と人々に恐れられる。
国王によって調査に派遣されたのは自然科学者のフロンサックと従者のアメリカ・インディアン、
マニだった。
大がかりな狩りでも捕まえられたのはオオカミだけで犠牲者は増える一方。
犠牲者を検屍したフロンサックはある手がかりを見つけ、貴族達の中に何か陰謀があるのではとにらむ。
200年前に実際に起きた事件をもとに作られた2002年日本公開のミステリー。
「クリムゾン・リバー」のヴァンサン・カッセル、「マレーナ」のモニカ・ベルッチなど俳優陣もそろえ、
クリスト・ガンズ監督の腕も悪くない。
しかし、どうも物語がまどろっこしい。インディアン、マニのカンフーばりのアクションなどもあるのに
途中でダレる。
色恋沙汰がよけい物語の流れを澱ませている。
ベルッチも重要な役のはずなのに途中で存在が消える。
「獣」のCGの動きも今ひとつなめらかさに欠ける。
インディアンのことをずっと「アメリカ先住民」と字幕が入る。差別語の問題もあるだろうけど
18世紀で「アメリカ先住民」などと言う言い回しは違和感がある。
物語の後半、いくつか秘密が明らかになるが、何でそんな事する必要があったのかと、首をひねるような
事柄もある。
ようは脚本が悪いのである。本さえちゃんとしていればもっとおもしろくなったやろうになぁ。


「キープ・クール」 中国映画
3月7日15:30 東宝東和試写室(角川書店、ドラゴン・フィルム)

本の露天商のシャオは美人の彼女アンホンにフラれ、なんとかヨリを戻そうとつきまとっていた。
ところがアンホンの今の彼、実業家の劉らに袋叩きにあう。
たまたま通りかかったチャンの鞄で応戦したシャオだが多勢に無勢、コテンパンにやっつけられる。
病院で治療を受けるシャオに鞄の中の新品パソコンが大破した、弁償しろと詰め寄るチャン。
しかし劉が悪いのだから劉から金をもらえとシャオは取りあわない。
なんとか劉と話し合いの場を設けることに成功したチャンはシャオと二人レストランで劉を待つが、
シャオは示談金など頭になく、復讐することだけが目的だった。
シャオが劉の手首を切り落とそうとしてると知ったチャンは、何とか復讐を思いとどまらせようと
必死に説得するがシャオの決意は固い。
劉を待つ間にどんどんエキサイトしていく二人だった。
「あの子を探して」「初恋のきた道」のチャン・イーモウ監督97年、日本未公開作品。
映画の大半はチャンとシャオ役のチアン・ウェン、リー・パオティエンの激しいセリフのやり取りで占められる。
ウェンは執念深くパワフルで少し吃音癖のある男を好演し、パオティエンも風采のあがらない中年男役で
いい味だしてる。
はじめはなだめていたチャンがあるきっかけを機にキレ、今度はシャオがなだめ役にまわる。
酔っぱらいも先に他の人間に酔っぱらわれると酔えないのと同じように、
キレるのも二人同時にはキレられないのかも。
事の発端から違うところに事件が展開していくのがおもしろい。


「過去のない男」 フィンランド映画
3月7日13:30 ヘラルド試写室(ユーロスペース)

ヘルシンキの街に流れ着いた一人の男。公園のベンチで寝ていると暴漢に襲われ、
身ぐるみはがされて重傷を負う。
男は収容された病院から逃げ出すが、記憶が一切失われ自分が誰だかわからない。
やがて貧民街で倒れているところをコンテナで暮らすニーミネン一家に助けられ、
しばらくやっかいになる。
週末に救世軍の炊き出しに連れていってもらった男は、そこで救世軍のイルマという女性と出会い
好意を寄せる。
後日救世軍事務所を訪れた男にイルマは着る物と職を与え、二人は急接近する。
自分に溶接の技術があることを発見した男は溶接工として採用されるが、給与振り込みのために
訪れた銀行で偶然強盗に遭い、事件に関与していると疑いをかけられ警察に捕まってしまう。
2002年カンヌ映画祭でグランプリを受賞したアキ・カウリスマキ監督作品。
登場人物全員がぼくとつとしたボソボソしゃべりで、妙な間がある。
おまけに弁護士役のおやじがおそろしくカツゼツが悪いが、なかなかのやり手だったり。
全体的にコメディーだけど声に出して笑わさないカウリスマキ監督の狙いなのだろう。
いろんな事が起こるが表面的には起伏は少なく見える。
退屈するようで見てしまう不思議な抑揚の映画。
照明は、いかにもあてましたというような不自然さがある。これも狙いか。


「ベッカムに恋して」 イギリス映画
3月6日15:30 東映試写室(アルバトロス・フィルム)

インド系英国人のジェスはベッカムの大ファン。部屋はベッカムのポスターがいたるところに貼られ、
自らも公園で男の子達とサッカーに興じる毎日。
女子サッカーチームに所属するジュールは、偶然ランニング途中ジェスのプレイを目撃し
チームに誘う。
女子チームの存在を知らなかったジェスは喜んでチーム入りをするが、
厳格なインド家庭の両親は許してくれない。
両親にバイトと偽って練習を続けるジェス。チームはやがて決勝へと駒を進めるが、
スカウトも見に来る決勝戦当日は姉の結婚式の日だった。
「リトル・ダンサー」の女子サッカー版と言ったところ。
スポーツに恋に友情、押さえるところはちゃんと押さえ、今なお厳格なインド社会のしきたりに揺れる
少女を描く。
主役のバーミンダ・ナーグラは小柄でキュート。
初めてチーム練習に訪れるくだりは本当にサッカーが好きで好きで仕方ないといった表情がいい。
ただ監督のグリンダ・チャーダはあまりサッカーを知らないよう。
ジェスがドリブルするときなど足元ばかり見てるし、試合のシーンも盛り上がりに欠ける。
試合シーンをもっとうまく撮れば、もっとおもしろい映画になったのに残念。


「ネメシス S.T.X」 アメリカ映画
3月5日10:00 UIP試写室(UIP)

USSエンタープライズ号のライカー副長とカウンセラーのディアナが結婚。
新婚旅行のためディアナの故郷ベタゾイド星に向かう途中電磁信号を傍受し、コララス3号星に向かう。
そこで発見した物はアンドロイドのデータ少佐そっくりのロボットだった。
バラバラになったロボットを集めエンタープライズに持ち帰る。
そのころロミュラスで革命が起こり、近くにいたエンタープライズ号が派遣されるが、
革命の主導者シンゾンはピカード艦長の若い頃にそっくりだった。
シンゾンは実はピカードのDNAから生まれたクローンだったのだ。
エンタープライズ号は最終兵器を備えたシンゾンの巨大戦艦と対峙するのだった。
スタートレック・シリーズの映画10作目で、ネクスト・ジェネレーション・シリーズ最終章。
全体的にセットやCGがちゃち。
謎の信号を受け惑星に探査に向かうが、なぜか4輪駆動車で地上を走る。
テレポートやワープまでできる科学力がありながら、なぜそんな「車」などという原始的な
移動手段を使うのか理解に苦しむ。
スタートレック・シリーズは普通の宇宙物ではなく、独特の宇宙観があったはずなのに
物語はただの宇宙戦争になっている。
ファンはこれでも満足するのだろうか。


「タイタンズを忘れない」 アメリカ映画
3月1日 ビデオ(WOWOWにて収録)

1971年アメリカ、バージニア州の田舎町。公民権運動で黒人差別が撤廃され、
白人高校と黒人高校が統合されることになった。
当然フット・ボールチームも統合されることになったが、町の唯一の楽しみはフットボール観戦で、
保守的な市民の反発は根強く残っていた。
しかも監督として送り込まれてきたのは黒人コーチのブーン。白人コーチのヨーストと衝突しながら
選手達をビシビシしごく。
やがて白人と黒人選手間のわだかまりも薄れチームは連勝していく。
それと共に住民の差別意識も少しずつ消えつつあったが・・・。
実話を元にしたデンゼル・ワシントン主演のスポーツ・ヒューマン・ドラマ。
スポーツを通して選手だけでなく町全体の差別意識を克服していくドラマだけど、
実にできすぎ。
次々問題が起こるが、きれいに解決するためにもうけられた障害のようで、
臭い予定調和物語。
フットボールのシーンも戦況がよくわからず、負けていたと思ったら急に逆転して勝っている。
最後は涙を誘うために無理矢理選手一人を犠牲にしたような終わり方。


「アイ・スパイ」 アメリカ映画
2月27日 15:30 ソニー試写室(ソニー)

国家保安局BNSのエージェント、アレックスは盗まれた最新型ステルス戦闘機スイッチブレイドが
武器商人ガンダーズの手に渡ったことを突きとめる。
ボクシング好きのガンダーズが、ブダペストで行われるボクシング世界タイトルマッチの
前夜祭パーティーでスイッチブレイドの入札を行うと言う情報を入手したBNSは、
アレックスを会場に潜入させるため、チャンピオンのケリー・ロビンソンに協力を依頼する。
お調子者のケリーは二つ返事で承諾するが、やたら作戦に首を突っ込みたがりアレックスの足を引っ張る。
ガンダーズの部屋にうまく侵入したアレックスだが、ケリーも部屋に入ってきて警報器を作動させてしまい、
二人は夜のブダペストを逃げまどう羽目になる。
エディー・マーフィー、オーウェン・ウィルソン主演。
「48時間」のエディーがそのまま貫禄を付けたようなキャラ。
コメディーだけどギャグはそれほどおもしろくない。
悪役もせっかくマルコム・マクダウェルを使ってるのにキャラに厚みがない。
最近よくオーウェン・ウィルソンが出てるけど、この人そんなに男前でもないし(むしろ鼻いがんでる)、
演技もうまくないのに何でこんなに主演作多いねやろ。
紅一点のファムケ・ヤンセンだけがセクシーで良かった。


「スパイ・キッズ」 アメリカ映画
2月23日 ビデオ(WOWOWにて収録)

グレゴリオとイングリッドはかつて名うてのスパイとして敵味方の関係であったが、
いつしか二人に恋が芽生えて結婚を機に引退した。
今では娘と息子をもうけ平和に暮らしていたが、昔の組織から仕事の依頼が来る。
非凡な毎日に退屈していた二人は久しぶりの仕事と張り切って出かけていったが
あえなく敵に捕らわれてしまう。
敵の手は二人の子供にもおよび、子供達は両親がスパイだったことを知り、
秘密兵器を駆使して両親救出に向かう。
2001年日本公開のロバート・ロドリゲス監督、アントニオ・バンデラス主演作品。
バンデラス主演と言っても全くいいところはなく。
主役はタイトル通り二人の子供だった。
映画は大人が見ると「何じゃこりゃ」と思うが、完全なキッズ・ムービーだった。
敵のキャラ、秘密兵器、色彩とどれをとっても子供向け。
しかしこの映画、ロドリゲスが撮る必要があったのだろうか。
しかもバンデラスまで使って。
「2」まで作られたんやから、ヒットしたんやろうけど・・・・。


「戦場のピアニスト」 ポーランド・フランス映画
2月19日10:00 ナビオTOHOプレックス

第2次大戦下のポーランド。ドイツ軍が首都ワルシャワに侵攻、ピアニストの
ウワディク・シュピルマン一家はユダヤ人居住区「ゲットー」へ強制的に移住させられた。
ゲットーでなんとかレストランのピアノ弾きの職を得るが、迫害はひどくなる一方。
やがて家族は収容所へ移送される事になったが、裏切り者として嫌われるユダヤ人警察の
友人ヘラーは収容所行きからウワディク一人を救った。
収容所行きから逃れたウワディクは非ユダヤ人のポーランド人達にかくまってもらっていたが、
武装蜂起が始まりポーランドの民衆とドイツ軍との激しい市街戦で、ワルシャワの街は瓦礫と化す。
あちこち逃げまどうウワディクだがとうとうドイツ軍将校に見つかってしまう。
カンヌ映画祭でパルムドールを受賞したロマン・ポランスキー監督作品。
主人公は迫害されたからと言って抵抗するわけでもなく、ただ逃げまどうだけで、
力仕事もしたことがないので肉体労働もすぐへこたれる。ここらが芸人らしい。
主役のエイドリアン・ブロディのしなやかで長い指は、本物のピアニストのよう。
こんな手では力仕事はできんわなぁ。
戦闘シーンもウワディクが窓から眺めた風景として撮影されているので、少し距離をおいた映像で、
窓枠で切り取られた部分しか見えない。
これがかえって戦闘のリアリティーを増している。
ピアノの演奏シーンは冒頭と中程に少ししかなく、最後のエンド・ロールにとってある。
ところがこの演奏が聴かせるものだから、レディース・デーでおばちゃんが多いにも関わらず、
誰も席を立たない。
こんなにおばちゃんの多い映画館で、エンドロールが流れる中誰も席を立たないのは珍しい。
映画館で幕が閉まってから観客全員が席を立つ光景を初めて見たような気がする。


「ボイス」 韓国映画
2月18日19:30 完成披露試写、梅田ブルク7(ブエナ・ビスタ)

女性ジャーナリストのジウォンは援助交際を記事にし、逆恨みをした男から
つきまとわれていた。
友人ホジュンは携帯電話を変えることを助言し、自分の別宅まで貸してくれた。
言われるとおり携帯を変えたが、誰もまだ知らないはずの電話に変な電話が入ったり、
不思議なことが身の回りに起こってくる。
偶然電話の声をホジュンの幼い娘ヨンジュが聞いてしまい、ヨンジュもまた
不可思議な行動をとるようになる。
やがてジウォンの携帯番号を過去に使っていた女性達が謎の死を遂げたり
行方不明になっていることが判明する。
韓国産のホラー映画。
全体的な印象はやはり「リング」を彷彿とさせる。
そこに「エクソシスト」的要素を少し振りかけた感じ。
やたら雨のシーンが多い。恐怖の演出としてはワンパターン。
ただ女優陣の表情は鬼気迫る物がある。特に子役のウン・ソウは子供だけど
すごい形相。
登場したときあまり可愛くない子役だと思っていたら、この怖い顔で採用されたよう。
配給はブエナ・ビスタなので、ディズニー映画でお馴染みのシンデレラ城のマークが
冒頭出るが、おどろおどろしい音楽にハングル文字のシンデレラ城は
今まで見たことのなかったパターンでおもしろかった。


「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」 アメリカ映画
2月18日13:00 UIP試写室(UIP)

高校生のフランクは幸せな家庭に育ったが、父の事業が失敗して両親が離婚、
ショックから家出をする。
ニューヨークの安宿でしばらく過ごしていたが、やがて持っていた小切手の口座残高が
底をつき途方に暮れていた。
偶然、颯爽と町を闊歩するパイロットを目撃したフランクは「これだ!」とひらめく。
人々の羨望の的パイロット、その制服は信頼の証だった。
何とかパイロットの制服を手に入れたフランクは堂々と小切手を換金する。
銀行も制服を見ると何の疑いもなくホイホイ金を出す。
こうしてフランクはある時はパイロット、またある時は医者、弁護士と
社会的信頼度の高い職業になりすまし小切手詐欺を働き続けるが、
そんなフランクをFBI捜査官のカールが追っていたのだった。
スティーブン・スピルバーグ監督、レオナルド・ディカプリオ、トム・ハンクス主演。
まさにゴールデントリオの作品だが、その割には普通の娯楽作品に終わっている。
娯楽作品として悪くはないが、このメンツでこの出来では物足りない。
3人とも取り立てて良くはないのだ。
ほんとに最近のスピルバーグはどうしてしまったんだろう。
無難で少しうまいただの監督になってしまった。
ディカプリオもハンクスも普通。唯一クリストファー・ウォーケンだけが存在感を示した。
冒頭、タイトルバックのアニメはよかった。スタッフ・キャストの文字を見ずに
バックのアニメの方をついつい見てしまうほど単純だけど楽しめた。


「地獄の黙示録・特別完全版」 アメリカ映画
2月17日 ビデオ(WOWOWにて収録)

「地獄の黙示録」をコッポラが22年ぶりに再編集して公開した作品。
53分もの未公開映像が加えられているが、公開当時の編集の方がやはりよかった。
サーフィン好きのキルゴア中佐のサーフボードを盗むシーンは、ウィラード中尉が
妙にお茶目に見えるし、プレイメイトのヘリがガス欠で足止めをくってると、
燃料と引き換えに一発させてもらう。
重傷を負わせたボートの女性を任務の邪魔だからと射殺した非情なウィラードが、
大事なガソリンをプレイメイトとの一発のために差し出すのも不自然。
この「特別完全版」ではウィラードはけっこうHしてる。
完全にカットされてたフランス人農園のシーンでも未亡人とねんごろになっている。
特別完全版ではウィラードの人格がブレてくる。
公開時にカットされてたシーンは、本当にいらないシーンばかりだった。
それにしてもフランス人農園のシーンに出演していた役者さん達は、かわいそうに
自分のキャリアに「地獄の黙示録」が加えられなくなったわけやね。


「アイアン・ジャイアント」 アメリカ映画
2月16日 ビデオ(WOWOWにて収録)

田舎町に住むホーガース少年は、森の中の変電所で巨大なロボットを発見する。
感電してるところを助けたのだが、ロボットはショックでどうやら記憶をなくしたようだ。
他の惑星から来たとおぼしきロボットはホーガースになついてついてくる。
しかたなく家の物置にかくまうがロボットは鉄を主食としているようで、
スクラップ屋で鉄の芸術家ディーンに事をうち明け助けてもらう。
しかし政府のエージェントがかぎつけ、ロボットを捜し出す。
軍隊まで出動する事態となったが、ロボットには秘密が隠されていたのだった。
2000年日本公開のアニメ。
記憶をなくし赤ん坊のような巨大ロボットと少年の交流を描いているが、
ロボットが宮崎駿の「天空の城ラピュタ」のロボットを彷彿とさせる。
日本で公開されるアメリカのアニメと言えばディズニーがほとんどだったので、
絵のタッチやキャラクターがディズニーとはまた違った雰囲気。
少年との交流だけでなく反戦映画としての要素もある。
最後の方はあまりにもロボットが人間的すぎるが、暖かくていいオチがついている。


「シカゴ」 アメリカ映画
2月13日19:10 完成披露試写、梅田ピカデリー(ギャガ・ヒューマックス)

1920年、シカゴ。売れないダンサーだったロキシーは、プロデューサーに売り込んでやると言う
ケイスリーと浮気していたが、ケイスリーの嘘がわかり射殺してしまう。
警察に捕まり監獄行きとなったが、そこにはロキシーが憧れていたスター、ヴェルマも殺人罪で
収監されてきた。
ヴェルマは浮気した旦那と実の姉を射殺したのだが、出世欲の固まりの弁護士ビリーがついていて、
舞台への復帰をねらっていた。
裏金を使って監獄でもスター気取りのヴェルマはロキシーなど相手にしない。
ロキシーはお人好しの旦那を使って、自分もビリーを雇い、裁判に挑もうとする。
ビリーのうまいマスコミ操作でロキシーは獄中のスターとなるが、ヴェルマはおもしろくない。
法廷を舞台に二人の熾烈なスター争いは続くが、またしても美しき殺人者が捕まり、
二人はかすんでしまう。
一計を案じたロキシーは大勝負に出る。
ボブ・フォッシーのヒット・ミュージカルの映画化。
ボブ・フォッシーのミュージカルの映画化というのは難しいと思う。
舞台そのままやると映画にする意味がないし、映画的にしすぎると
ボブ・フォッシーの舞台の楽しさが損なわれる。
今回監督デビューとなる振付師のロブ・マーシャルは、ロキシーの空想部分と言うことにして
舞台的な演出をそのまま使った。
これが見事にはまって無理なくミュージカル部分を楽しめるようになった。
レニー・ゼルウィガー、キャサリン・ゼタ=ジョーンズもよくがんばってるが、
名誉欲丸出しの弁護士役のリチャード・ギアはハマリ役。
曲もみんないいし、ダンスもセクシーでオリジナリティがある。
ほんとに良くできたミュージカル。
この映画を見るとボブ・フォッシーの舞台版がすごく見たくなる。


「ソードフィッシュ」 アメリカ映画
2月9日 DVD

仮保釈中の国際的ハッカー、スタンリーのもとにジンジャーと名乗る美女が訪れ、
報酬1000万ドル、ボスに会うだけで10万ドルという仕事を持ちかける。
別れた妻から娘を取り返したいスタンリーは莫大な裁判費用を必要としていた。
渋々ジンジャーのボス、ガブリエルに会う。
ガブリエルから持ちかけられた仕事とは、麻薬取締局が行った囮捜査
「ソード・フィッシュ作戦」のために作った会社が利益を上げ、手つかずのまま
15年の間に95億ドルもの大金にふくらんでいる。
その金をいただくには銀行のコンピューターをハッキングしなければ行けない。
それでスタンリーに白羽の矢が立てられたのである。
ガブリエルはただの泥棒でもギャングでもなく、バックにはとてつもなく大きな力が感じられた。
FBIも捜査に乗り出してると知ったスタンリーだが、退くに退けない深みにはまってしまっていた。
「60セカンズ」のドミニク・セナ監督、ジョン・トラボルタ主演。
冒頭の爆発シーンがすごい。
最近の映画・CMではよく使われる手法だけど、上手に使って、迫力ある映像でいきなりつかんだ。
ストーリー的にはちょっと強引なところもあるが、お構いなしに観客をグイグイひっぱていく。
トラボルタは一見変な風貌だが、とてもかっこいい。
カリスマ性があり、強い信念で動じない。
トラボルタってほんとにいい役者になったなぁ。
他にヒュー・ジャックマン、ハル・ベリー。


「シッピング・ニュース」 アメリカ映画
2月8日 DVD

ニューヨークに住むさえない中年男クオイルは妻に裏切られ、幼い娘を連れて
父の故郷のニューファンドランド島にやってきた。
廃屋となっていた父の家を修理し、なんとか地元の小さな新聞社に職を見つけたが、
クオイルの仕事は小さな港に出入りする船に関する記事を書くことだった。
慣れない仕事、慣れない生活に初めはとまどっていたクオイルだが、
周りの人たちとの交流を通じて徐々に自信を取り戻していく。
「ショコラ」「サイダーハウス・ルール」のラッセ・ハルストレム監督、
ケビン・スペイシー主演。
世界的ベストセラーが原作らしいが、やはり小説がベースにならないとこの手の独特の雰囲気は
描けない。
映画の脚本家だけでは出せない物語の空気がある。
物語的に大きな起伏もないのに最後までひっぱていけたのは原作の持つ雰囲気と、
演出の腕だと思う。
ケイト・ブランシェットも大事な役で出ていたが全く気付かなかった。うまく化けたもんや。
他にジュリアン・ムーア。


「エネミー・ライン」 アメリカ映画
2月7日 DVD

ボスニアの平和維持活動のためアラビア海上で監視を続けるアメリカ空母カールヴィンソン。
パイロットのクリスは退屈な偵察任務に嫌気がさし、海軍を辞めようと思っていた。
いつもの偵察飛行中にセルビア軍の民間人虐殺現場を撮影するが、撃墜され敵のまっただ中に
取り残される。
口封じのために必死になってクリスを探すセルビア軍。
カールヴィンソンではレイガート司令官がなんとかクリスを救出しようとするが、
政治的配慮から救出部隊を派遣できない。
クリスはたった一人で敵地からのサバイバルに挑む。
オーウェン・ウィルソン主演の戦争アクション。
「プライベート・ライアン」「レニングラード」のような、
「これでもか」というリアルで凄絶な戦闘シーンで「戦争の悲惨さを考えさせる」事をせず、
純粋に娯楽作品として戦争映画を撮ってるのがいい。
冒頭のミサイルから逃げまどう戦闘機のシーンで「つかみ」、地上での戦闘に繋ぐ。
1本で空中戦と地上戦両方が楽しめる。ちゃんと手練れの追っ手もいるし。
見せ方もうまい。
ただ、この映画にオーウェン・ウィルソンは合ってるのだろうか。
敵地でサバイバルするにはちょっと線が細いような気がする。
レイガート司令官役にジーン・ハックマン。


「ダークネス」 スペイン映画
2月7日15:30 ヘラルド試写室(ギャガ・ヒューマックス)

スペインで子供7人の失踪事件が起こり、少年一人だけが発見される。
少年はショックから意味不明の言葉を言うばかりで、警察は手がかりを
得る事もできず事件は迷宮入りした。
40年後、マークはアメリカで精神を病み、故郷スペインに家族共々引っ越してきた。
マークの父で精神科医でもあるアルベルトの近くの古い家に住み始めた一家だが、
原因不明の停電に何度も見まわれ、息子のポールは闇を怖がりだす。
マークは粗暴になり、知らない間にポールの身体は傷を負っていた。
娘のレジーナはこの家に何か原因があると主張するが両親は取りあおうとしない。
レジーナはボーイフレンドのカルロスと、かつての家の持ち主について調べ出す。
やがて子供達が失踪した時と同じ皆既日食の日が40年ぶりに訪れようとしていた。
「アザーズ」に続くスペイン産ホラー映画。
「アザーズ」と同じように見せない恐怖でグイグイ引っ張る。
家自体はそれほど大きな物ではなく中産階級の大きさだが、この普通さが恐怖を身近に感じさせる。
「シャイニング」や「ローズマリーの赤ちゃん」などかつての名作をうまく取り込んで
物語を作った。
今やスペインと日本はホラー映画ではハリウッドを一歩リードしているのかもしれない。


「タキシード」 アメリカ映画
2月7日13:30 UIP試写室(UIP)

タクシー運転手のジミーは、一目惚れした女の子に声もかけられないだめ男だが
運転の腕はピカイチ。
その腕を見込まれて大金持ちのデヴリンのお抱え運転手になる。
裏表のないジミーはデヴリンに気に入られ、屋敷の中も自由に出入りすることを許されるが
タキシードだけは決して触ってはいけないと厳しくデヴリンから言い渡される。
ある日デヴリンを乗せた車は何者かに襲われ、デヴリンは意識不明の重傷を負う。
デヴリンは実は秘密組織CSAのスーパー・スパイだった。
ジミーは好奇心からデヴリンのタキシードを着てみると、身体に異変が起こった。
車より速く走り、格闘の達人となる、モードを切り替えると壁を上り、ダンスまで踊れる
スーパー・タキシードだった。
ジミーはデヴリンになりすましCSAから派遣された新米美人エージェントのデルと
陰謀を突きとめるため任務に就く。
ジャッキー・チェン主演のスパイ・コメディー。
うたい文句に「『マスク』+ジャッキー・チェン=『タキシード』」とあるが、
まんまそんな感じだった。
ドリームワークス製作だが、スピルバーグが直々ジャッキーを口説いて
出演を承諾させたらしいが、ジャッキーが監督もすればもっとおもしろくなってたと思う。
タキシードを着れば急にスーパーマンになりエンターテイナーにもなると言う設定だけの映画。
カンフー・アクションもいまいちだし、ギャグもそれほどおもしろくない。
大味なアクション・コメディー。


「クローサー」 中国(香港)・アメリカ映画
1月30日15:30 ソニー試写室(ソニー)

チョウ兄弟の経営する巨大企業のコンピューター・ネットワークがウイルスにより
大混乱をきたしていた。
救ったのは「電脳天使」と言う謎の人物だった。
後日チョウ・ルイ社長の前に現れた電脳天使はリンと言う美しい女性だった。
社長室に通されたリンはボディーガードを倒しチョウ社長を暗殺。
コンピューターを駆使する妹クワンの誘導で見事脱出に成功した。
リンとクワンは幼い頃、科学者の父を殺され、殺し屋に育てられた。
やがて大人になった姉妹はハイテクを駆使した暗殺者となったのである。
捜査に乗り出した女性捜査官のコンは頭脳明晰でカンフーの達人。
コンはルイ社長の弟ナンが怪しいとにらむ。
ナンは会社を独裁化するために重役ヤンの殺害をまたしても電脳天使に依頼。
恋人との平和な生活を求めた姉のリンは断ろうとしたが妹クワンは単独で
仕事を決行。
ところが刑事コンも現場に向かっていた。
危険を察知した姉のリンも急行するが、そこには証拠隠滅のためにナンから差し向けられた
暗殺者達が待ち受けていた。
「トランスポーター」のコーリー・ユン監督作品。
主要な3人の女性は美しくスタイル抜群。「チャーリーズ・エンジェルス」のアジア版と言ったところ。
台湾からは「トランスポーター」のスー・チー、中国からは「少林サッカー」のヴィッキー・チャオ、
香港からは「天使の涙」のカレン・モク。
他に韓国のソン・スンホン、日本から倉田保昭らが脇を固め、アジアン・パワー炸裂。
話自体は荒唐無稽なところもあるが、アクションはガン・カンフー・カーと多彩で楽しめるし、
パターンを変えあの手この手で見せる。
最後に彼女たちが倉田保昭と日本刀で戦うシーンは殺陣もうまい。
倉田はアクションの切れもよく、強敵でかっこいい。


「小さな中国のお針子」 フランス映画(中国語)
1月28日15:30 ヘラルド試写室(アルバトロス・フィルム)

1971年中国。文化大革命によって医者の息子ルオとマーは再教育の名のもとに
山奥の村に送られる。
村は村長も含め住民全員が文盲で、二人は肥え汲みや野良仕事、
鉱山の採掘など過酷な労働を強いられた。
そんな時、老仕立屋と孫娘の「お針子」が古びたミシンと共に村にやってきた。
可憐なお針子に一目惚れしたルオは、たちまちお針子と仲良くなる。
お針子から、やはり再教育で送られてきた「めがね」が西洋の本を
たくさん持っていると聞かされる。
西洋の本は反動的書物として持っているだけで処罰されるが、
ルオとマーは読みたくて仕方がない。
めがねから本を盗み出し、夜になると隠してある洞窟に集まって字の読めない
お針子のためにバルザックやトルストイを読んで聞かせてやるのだった。
時間が止まったような寒村に、本の世界はルオやお針子を原色の別世界へと誘った。
やがてお針子に自由への欲求が芽生え始めた頃、ルオは父の病気を見舞うため2ヶ月
村を離れることになった。
中国からパリに渡った映画監督ダイ・シージェがフランス語で書いた小説が原作で、
フランスのプロデューサーが映画化を持ちかけ自らメガホンを取った。
物語はルオとマー、お針子の三角関係になりそうな危うさの中、
ルオとマーの友情で均衡が保たれる。
ロケ地がすごい。
山水画に描かれた急な山々の奥の奥で撮ったようなすごい景色。
ほんとに何もなさそうな村。
この村なら寝る間を惜しんで読書に耽るのもわかる。
ラストはなんかふんぎれが悪い。


「スコア」 アメリカ映画
1月26日 ビデオ(WOWOWにて収録)

腕のいい金庫破りのニックは長年続けていた裏家業から足を洗い、かたぎになろうとしていた。
そこに古いつきあいの故買屋マックスから大仕事が持ちかけられる。
今回のヤマは自分の住むモントリオールの保税倉庫からフランス王室の杖を
盗み出すというものだった。
そのためには保税倉庫で働くジャックと組まなければならない。
この仕事をこなせば念願のジャズクラブのオーナーとして恋人と平和に暮らせるが、
今まで信条としてきた「仕事はよその町で」と「単独行動」を自ら破らねばならない。
一腹ありそうなジャックと組むことを渋々承諾したニックは金庫攻略の手を考え始める。
ロバート・デ・ニーロ主演、マーロン・ブランド、エドワード・ノートン共演。
映画としては退屈しないが使い古された話。
なぜこんな映画にデ・ニーロ、ブランド、ノートンが必要なのだろう。
新旧の名優3人による犯罪劇を作りたかったのだろうけど、話が平凡すぎる。
ラストのどんでんも「今時そんなオチはあかんやろ」と思わせるようなお粗末さ。
デ・ニーロも「ヒート」で慎重でクールな犯罪者役をやってるので、
同じような役は嫌なことないんやろうか。
この人何でも仕事受けるなぁ。


「ヴィドック」 フランス映画
1月24日 ビデオ(WOWOWにて収録)

19世紀のパリ、有名私立探偵ヴィドックが犯人と格闘するうち溶鉱炉に転落し、
死亡したと新聞は大々的に報じる。
ヴィドックが追っていた連続殺人犯はガラスの仮面を付けた怪人だった。
ヴィドックの死に悲嘆している助手のニミエのもとにヴィドックの伝記を執筆しているという
作家のエチエンヌが訪れ、ともに事件の真相を探り始める。
しかし証人のみならずエチエンヌ達にも魔の手は忍び寄り、恐ろしい陰謀が浮かび上がってくる。
ジェラール・ドパルデュー主演。
昔のパリの街並みにダークな色調はうまく作っているが、ティム・バートンが
すでに使い古した世界なので新鮮みはない。
ドパルデューがでっぷり肥えてるせいで、ヴィドックと怪人の格闘シーンは
ヴィドックがそんなに強いと思えないし、化学実験でトリックを解明するよな
頭脳明晰にも見えない。
殺人手法が科学トリックだったりするのに、最後は非科学的な所に落ち着く。
何とか続編ができるようにはしてあるけど、どうかなぁ。


「メメント」 アメリカ映画
1月23日 ビデオ(WOWOWにて収録)

レナードは目の前で妻を殺され、犯人に頭を殴られ、昔の記憶はあるものの
事件以降10分前の記憶がなくなる前向性健忘症となる。
妻を殺した犯人を追うが10分たつと記憶が消えるため常にポラロイド写真にメモをし、
重要な事柄は身体に入れ墨として彫り込んだ。
何人か協力者らしき人物もいるがそれらが敵か味方もわからぬまま、
砂漠の中から1本の針を探し出すような犯人探しをレナードは続ける。
映画はラストシーンからスタートし、いくつかのシークェンスがお尻から逆に積み上げられる。
観客は10分前の記憶がない主人公と同じく、なぜそこにいるのかもわからない。
全く先が読めない展開。
かなり細かく手がかりのピースがいろんなシーンに仕込まれているので、
それらを観客は自分なりに記憶して整理していかないと物語がわかりにくい。
完全なアイデアの勝利だが、最後まで見ても違う解釈をする人間がいる。
つまり注意深く観ないと観客も混乱する。
ラストの絶望的どんでん返しが後味悪いと嫌う人がいるけど、
この映画は名作だと思う。まだまだ探せば新しい手法はあるもんやなぁと感心する。


「ピンポン」 日本映画
1月23日14:30 サンケイホール

ペコとスマイルは幼なじみで同じ片瀬高校卓球部の1年。
しかしペコは練習をサボり、馴染みの卓球場タムラで賭け卓球で小遣いを稼ぐ毎日。
卓球部の顧問小泉は持ち前の優しさゆえ勝てないスマイルの才能を見抜き、
ちゃんと指導したいがクールなスマイルはそんな小泉を疎ましく思う。
インターハイの日、ペコは幼なじみの海王学園アクマに負け自信喪失。
スマイルは中国から留学してきた卓球エリートの通称チャイナに負け、
約束通り小泉の特訓を受けることとなり、才能を開花させていくが、
ペコは卓球を捨てる。
松本大洋の漫画が原作で、窪塚洋介主演。
ドラゴン・アクマ・チャイナらライバル達も個性的でキャラクターがハッキリしていて
手強い。だから主人公達が引き立つ。
それぞれ脇役達のサイド・ストーリーもうまく紡がれ、それらが集まって大きな本筋に
溶け込む。原作がしっかりしているからだと思う。
漫画が原作と言うこともあり、芝居が全体的に大げさで漫画チックだが、
卓球部キャプテン役の荒川良々は芝居なのか素なのかわからない、
独特の「間」と雰囲気を持っている。
それとスマイル役のARATAは全編ぼそぼそ喋りなのに、主役の窪塚より
印象を残したように思う。
物語は青春の挫折と再起のスポ根ものなのだけど、ストーリーとセリフのうまさで、
まんまと術中にはまってしまった。


「007 ダイ・アナザー・デイ」 アメリカ・イギリス映画
1月21日19:00 完成披露試写、リサイタルホール(FOX)

世界に緊張をもたらすムーン大佐抹殺のため北朝鮮に潜入したボンド、
死闘の末見事ムーン大佐を滝に突き落としたが、何者かの裏切りで捕らえられた。
14ヶ月に及ぶ過酷な拷問と監禁後、ムーン大佐の腹心ザオとの人質交換で解放されたボンドだが、
世界情勢の悪化はボンドが拷問に屈して情報を漏らしたためだと、
「00」ナンバーを剥奪され幽閉される。
汚名をすすぐべく脱走したボンドはザオを追ってキューバへ向かう。
DNA治療と称する秘密療法を行う病院にザオがいると知ったボンドは孤島にある病院に向かうが、
そこには前日知り合った女性ジンクスがなぜかいて、破壊工作をしていた。
辛くもザオに逃げられたボンドは現場にあった手がかりから、ダイアモンド王のグレーブスが黒幕だと
にらみ、イギリスに飛ぶ。
グレーブスは派手なパフォーマンスで巨大な人工衛星を使った第2の大陽「イカルス計画」を発表したのだった。
20作&40周年記念として作られた007シーズ最新作、ピアース・ブロスナン主演。
冒頭で007が14ヶ月幽閉され毎日拷問を受ける、こんな設定今まで無かった。
拷問シーンが裸のお姉さんのお馴染みのシルエットにからむ、娯楽作品にふさわしくない
少し暗いオープニング。
でも別に痩せこけることもなく、髪やひげがのび放題になるだけ。(まぁ、そんなボンドも珍しいが)
物語は「?」というところもあるが、秘密兵器満載でアクションは楽しめる。
特に特殊装備搭載のアストンマーチンVSジャガーの氷上バトルは、
カーアクションを見慣れた観客をも楽しませる。
20作記念らしく、所々に過去の作品のセルフ・パロディー的なシーンが登場し、007ファンなら
これはあの作品、あのシーンと楽しみが増える。
ハル・ベリーは「アカデミー賞女優」ではなく、ちゃんと「ボンド・ガール」としてお色気要員に徹していた。
最近少しダレ気味の007シリーズにアクションのキレが戻り、「そんなアホな」的な秘密兵器で楽しませる。
これでしばらくはシリーズ安泰か。


「ウェルカム!ヘヴン」 スペイン・フランス・イタリア合作作品
1月16日15:30 東映試写室(クレストインターナショナル、東京テアトル)

天国は過疎状態、ところが地獄は逆に過密状態。天国対地獄の戦いは地獄の勝利が目前に迫ってるかに見えた。
そこで天国側はボクサーの魂を天国に導く作戦をたて、このミッションの工作員として選ばれたのは
天国の女性歌手ロラ。
しかしこのミッションを察知した地獄側もボクサーを地獄に引き入れるため、
粗野なウエイトレスのカルメンを送り込む。
ロラはボクサーの妻として、カルメンはボクサーのいとことして潜入成功。
3人の奇妙な生活は始まり、地獄側の優勢かと見えたが、地獄でクーデターらしき不穏な動きがあり、
地獄の作戦本部長ダベンポートは天国の作戦本部長マリーナと手を組み、
ボクサーを天国に送るよう協力することになった。
ペネロペ・クルス、ビクトリア・アブリル主演。
天国の公用語はフランス語で、地獄は英語、現世はスペイン語という設定はおもしろいが、
始まると物語の進行がどうもまどろっこしい。
工作員を送ってまで、なぜボクサーを自陣営に引き入れたいのかよくわからない。
このお話、どうしたいのかよくわからないところがある。
特にラスト、主要人物のその後も煮え切らない。
ペネロペを見に行くだけの映画。


「ホワイト・オランダー」 アメリカ映画
1月16日13:00 ヘラルド試写室(ギャガ・ヒューマックス)

15歳の少女アストリッドは父親が誰かも知らず、激しい気性の芸術家の母と二人暮らし。
ところが母が恋人を殺し、服役したため天涯孤独となり、里子に出されることになった。
引き取ったのは元ストリッパーのスター。ボディコンの派手な服を身にまとっているが
敬虔なクリスチャン。
はじめはとまどっていたアストリッドも、生きていくためにスターに合わせて生活するしかなかった。
面会に訪れたアストリッドがスターから送られた十字架を付けているのを母が見とがめ激怒する。
「他人に心を開いてはいけない、1人で強く生きていけ」と。
同棲相手を盗られると思ったスターによって、家を追われるアストリッド。
収容された施設でのいじめ、2件目の里親に対する母の干渉、同じ境遇の少年ポールとの出会い。
アストリッドの心は揺れ動きながら母の呪縛から逃れようとする。
ミシェル・ファイファーがきつい母親役を演じているが、こめかみに浮かぶ血管がすごい。
監督のピーター・コズミンスキーの演出は細かな心理描写が必要とされる題材で、
ともすればくどくなってしまうのを、はしょれるところははしょると、潔い切り方でスッキリ見やすい。
なによりも少女役のアリソン・ローマンが難しい役どころを実にピュアで自然に演じていてすばらしい。
レニー・ゼルウィガーも、優しいが弱さを持つ里親を好演。
今年のベスト10に入る映画だと思う。


「T.R.Y.」 日本映画
1月15日14:30 シネマR170

20世紀初頭、西洋文化が入り込み華やかな都となった上海で、
伊沢はペテン師として暮らしていた。
ところが裏社会に通じた人物をカモッたがために、命を狙われることとなる。
命を救ってくれたのは伊沢のペテン師としての才能と頭脳を見込んだ
革命派の関。
関は革命に必要な武器を手に入れるため伊沢を引き入れるが、
関の計画とは日本軍部を引っかけて大量の武器を手に入れようというものだった。
自称「三流ペテン師」の伊沢は大それた計画に渋々乗り、昔の仲間を呼び寄せ
作戦を立てるが、相手は切れ者の東だった。
織田裕二主演、大森一樹監督作品。
TVのCMなど宣伝にも金をかけ、織田がキャンペーンで「ハリウッド映画にひけを取らない
おもしろさ」と強調していたので、少し楽しみだったけどがっかり。
「引っかけ映画」と聞いていたので「スティング」のように観客をも痛快に騙してくれると
楽しみにしていたのに、物語が薄っぺらい。
途中で仕掛けが観客に読まれるし、伊沢がそんなに頭脳明晰に見えない。
大森監督が「織田裕二の魅力を100%出した」と言うとおり、
織田裕二の「長いプロモーション映画」なのかもしれない。


「ボーリング・フォー・コロンバイン」 カナダ映画
1月14日13:00 ヘラルド試写室(ギャガ・コミュニケーションズ、Gシネマグループ)

ジャーナリスト、マイケル・ムーア監督・主演のドキュメンタリー。
1999年アメリカのコロンバイン高校で起こった銃の乱射事件を中心に、
なぜアメリカでは銃による犯罪が多いのか、アメリカと銃について真っ正面から考える。
マイケル・ムーアと言う、でっぷり肥えて無精ひげでめがねかけて
いつも野球帽かぶってるジャーナリストがどこでもアポなしでカメラを向け
インタビューする。
銃による犯罪と言う重いテーマだが、皮肉に満ち、警官がまじめに答えれば答えるほどおかしく、
編集もうまい。
しかしけっして事実をゆがめているのではなく、はじめから銃はいけないと言うありきたりな結論から撮影せず、
いろんな仮説を立て、一見ばかばかしいと思われるようなことも真剣に検証しながら
アメリカでの銃犯罪を考えているのがいい。
途中でタイトルのコロンバイン高校での乱射事件の映像が入る。
報道の映像ではなく、犯人の高校生が乱射した図書館の防犯カメラ数台の映像をそのまま使い、
現場から助けを求める生徒達の電話の声をかぶせていく。
そこには何の操作もなく、ただ事実だけがある。
犯人が心酔していたマリリン・マンソンへの非難の声が高まり、コンサートは中止を余儀なくされた。
ムーアはマンソンにもインタビューする。
話を聞いてマンソンはすごく頭がいいと思った。
アメリカが銃を捨てられないのはマスコミによる恐怖のキャンペーンのせいだという。
恐怖を植え付けて消費させる。その恐怖心が銃に向かわせるという。
この一言から仮説を立て、ルポの後半はその検証に当てられる。
インタビューする人物も多彩で、全米ライフル協会会長チャールトン・ヘストン。
アニメ「サウスパーク」の作者(犯人と同じコロンバイン高校出身)など。
途中でアメリカが行ってきた「よその国」への攻撃映像、歴史のお勉強をアニメで見せたり、
実にいろんな映像手段で「アメリカと銃」について考える。
この映画を見終わって得た自分なりの結論は「アメリカで銃犯罪が多いのは、
アメリカ人がアホだから」ということ。
カンヌで特別賞を獲ったのもうなずける。
へたな映画よりおもしろかった。
ただラストの映像は作りすぎでわざとらしい。


「ノー・グッド・シングス」 アメリカ映画
1月10日15:30 ヘラルド試写室(ギャガ・ヒューマックス)

隣人から家で娘探しを頼まれた刑事ジャックは、娘を捜すうちに知らずに強盗団の家に上がり込み、
自分たちを捕まえに来た刑事と勘違いされ監禁される。
銀行員を抱き込んで大金をせしめる計画実行の日、強盗団はボスの情婦エリンをジャックの監視役に付ける。
暴力をふるうボスから逃れられないエリンはジャックといつしか心を通わせ、
ジャックと共に逃げることが人生やり直しのチャンスと思うようになる。
サミュエル・L・ジャクソン、ミラ・ジョボビッチ主演、「ファイブ・イージー・ピーセス」「リービング・ラスベガス」の
ボブ・ラフェルソン監督作品。
舞台劇のようにチマチマした物語展開。
刑事がチェロが趣味というのも違和感があるし、女が元ピアニストという、
クラシック繋がりというのも何かとってつけたような展開。
短編小説が原作みたいやけど映画の方も短編小説みたいなチープで古くさい作り。
サミュエル・L・ジャクソンもなぜかヅラくさい。
ミラ・ジョボビッチもセクシーさに欠ける。
もっと人生を狂わせてもと思わせるような女でないと物語が成立しない。


「裸足の1500マイル」 オーストラリア映画
1月9日13:30 ヘラルド試写室(ギャガ・コミュニケーションズ、Gシネマグループ)

1931年のオーストラリア。先住民アボリジニと白人の同化政策が行われ、混血のアボリジニの子供は
収容所に強制的に入れられ、白人教育がなされていた。
ジガロングに住む14歳のモリーと妹のデイジー、いとこのグレイシーは混血で、役人に捕まり収容所に送られた。
たくさんの子供達と収容所で過ごしていたが、モリーは2人を連れて脱走する。
名うての追跡人、アボリジニのムードゥーが後を追うが、賢いモリーはムドゥーを振り切って
広大なオーストラリアの大地を逃げ続ける。
食べ物を恵んでくれた親切な女性から、うさぎ除けフェンスに沿っていけば故郷に帰れると知ったモリー達は、
うさぎ除けのフェンスに沿って何日も歩き続けるが、役人達もフェンス沿いに歩いていくに違いないと先回りする。
実話をもとにした、「パトリオット・ゲーム」「ボーン・コレクター」のフィリップ・ノイス監督作品。
「裸足の1500マイル」と邦題はついているが、実際は靴を履いている。(原題は「うさぎ除けフェンス」)
少女達は3人ともアボリジニの血を引いているらしいが、とても自然でいい表情をする。
子供を連れて行かれるシーンでのアボリジニの女達の泣き方がいい。とても悲しそうな泣き方をする。
収容所のシーンは少し短い。もう少し過酷な収容所生活を見せないと脱走の必然性が薄くなる。
全体的にノイス監督の優しさか、追跡人や役人がそれほど憎々しく見えない。
もう少し悪人に描いておかないと少女達の過酷な逃走生活が引き立たない。
ケネス・ブラナーが役人役で出ている。


「ビロウ」 アメリカ映画
1月7日15:30 ヘラルド試写室(ギャガ・ヒューマックス)

第2次大戦中、米潜水艦タイガー・シャークは、ドイツ潜水艦の攻撃で沈没した
英国病院船の生存者の救出に向かう。
助けられたのは3人だけだったが、一人は潜水艦では疫病神とされた女性、看護婦のクレアだった。
タイガー・シャーク号は艦長が事故死したため、副長のブライス大尉が指揮しているが、
敵艦の攻撃に息を潜めている最中にレコードが鳴り響いたり、3人を救助してから何者かが災いをもたらしているようだった。
敵の攻撃で艦は大打撃を受け窮地に立たされるが、怪現象が続き士気は低下する。
クレアは艦長の死に疑問を抱き始める。
「ピッチ・ブラック」のデヴィッド・トゥーヒー監督作品。
潜水艦と言う男の世界に花を添える女性を登場させるために救助される看護婦を登場させたが、
この看護婦がやたらと軍人に口出しするのは不自然。
オカルト的な要素も中途半端。
海中のシーンはすべてCGだが、CGっぽさが出過ぎ。
もう少し自然な質感で作るか、昔ながらのミニチュアにCG合成した方が良かったかもしれない。
作りようによってはもう少しおもしろくなったのに残念。
副官役のホルト・マッキャラニーは存在感があり印象を残した。これから仕事が増えるやろうなぁ。